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認知症による物盗られ妄想の対応。言葉かけを統一することの重要性

 

 Bさん(91)は夫が亡くなってから自宅で一人暮らしをしていましたが、娘に対して1日数十回電話をしてきては「通帳や判子が見当たらない」「大事な着物が無くなった」と話される事が頻繁になりました。

 また1日数回近所のスーパーへ買い物に行き、同じ物を購入する等、認知症の周辺症状や中核症状が顕著に見られるようになったため病院で診てもらったところ「アルツハイマー型認知症」と診断されました。

 一人の生活は難しいと判断され、有料老人ホームに入居されました。

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入居後に対応した方法は

 特別拒否もなく入居されたBさんですが、自宅の時と変わらず「判子がない」等の訴えは続きました。

 自宅から金銭に関わるような物は持ってきていない為、「持ってきてないですよ」「自宅にちゃんとおいてありますよ」等の声かけや、「判子は今新しい物に作り替えているからこの場にはないです」「今日家族が持ってきてくれるようです」と、Bさんの質問に対してスタッフはバラバラな返答をしていました。

 するとBさんはどんどん不穏になってしまったのです。最終的には大声で「あんたが盗ったんだろう!!」と、興奮してスタッフに言い放ったのです。物盗られ妄想にまで発展してしまいました。

不穏の原因は?

 では何が原因だったのでしょうか。

 それは認知症の人でなくとも不穏になるような事でした。Bさんは色々なスタッフに「判子がない」と訴えました。しかし聞いたスタッフは全員違う事を言って、その場を凌ごうとしたのです。

 認知症の人は、物盗られ妄想の症状も出やすく、人を疑う事があります。特に自分の持ち物が無くなった状況では、「この人達の誰かが盗ったのではないか」と、考えるのは当然です。

 そんな状況で、スタッフがバラバラな返答をすれば、認知症の人でなくても「この人達は嘘をついている」という状況になりかねません。そうすれば【嘘をついている=誰かが盗った】という答えに導かれてしまうのです。

物盗られ妄想の対応方法は

 物盗られ妄想を改善する為にはどうしたらよいか、スタッフは会議を開いて検討しました。

 家族に三文判を購入してもらい(誤魔化すため)、自室で保管してもらえばよいのでは?と言う意見も出ましたが、「保管が出来ないから家族が管理している。すぐに失くすので同じ」という理由で却下となりました。

 では一度、Bさんに何度訴えられても、娘さんが保管しているという言葉かけで統一してみようという事になったのです。翌日からスタッフは統一して、「娘さんがちゃんと保管しています」とだけ伝えるようになりました。

認知症の方でも理解できる

 そして統一してから2日、3日と経ちましたが、相変わらずスタッフに訴えてくる状況は変わりません。しかし4,5日くらいしてから状況が少し変わってきました。

 Bさんの訴えが、「判子は娘が保管しているのよね?」と訴えるようになったのです。

 認知症の方でも同じ事を何度も言われると、ある程度理解する事は出来ます。きちんと毎日規則正しく、同じリズムで生活する事が大事です。

 そうするとわからなかった居室の場所が理解できるようになったり、食事をとる食堂へ一人で行く事が出来るようになったりと、習慣化されている行動を本人が把握できるようになります。

 Bさんも、スタッフが都度「娘さんがちゃんと保管しています」と同じ言葉を統一して伝える為、少しずつ理解できるようになってきたのでしょう。物盗られ妄想からくる不穏や興奮もほとんどなくなりました。

 言葉かけだけでもここまで変わる。今回はそんな話をご紹介しました。

[参考記事]
「認知症による物盗られ妄想の対応の失敗例」

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