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認知症の人が性的行為をする時の対応法。明確な拒否が大切

 

 特別養護老人ホームに入居し3か月の70代の男性利用者Tさんはアルツハイマー型認知症で介護度3です。食事や入浴など日常生活において介助が必要な場面はあまりなく、自分で行うことが出来ます。

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性的行為について

 老人ホームにて頻繁に発生する事案の一つとして利用者さんによる女性職員への性的行為があります。主に体を触ったり自分の陰部を見せつけてきたりという行為です。認知症でなくてもされる方はいますが認知症の方が圧倒的に多いです。

 その理由の一つとして認知症により抑制が効かなくなっていることが挙げられます。普通の人であれば日常生活をしていく中で異性しかも他人の身体に触ればどうなるか分かります。小さな子供であれば仕方がないで片付けられますが、大人であれば逮捕される可能性もあります。そのため人にはしてはいけないという抑制、心のブレーキがあるのですが、認知症の場合、そのブレーキが無くなってしまい感情を直ぐに表に出してしまうため女性に触りたいと考えれば直ぐに行動してしまうのです。

Tさんの女性職員に対する性的行為

 入居時から女性職員のお尻や胸を触ることがたびたび報告されてきました。ベテランの女性職員は仕方がないと諦めていますが若い職員はそうもいきません。Tさんの事が怖くなり介護できない時もありました。Tさんが性的行為に及んでいる際にどういった態度でいるのか観察すると、笑いながら行っており悪意を感じていないように思いました。

明確な拒否が大切

 よく認知症の方の事を「子供みたい」と言う職員や家族がいます。子供と聞くと馬鹿にしているように聞こえてしまうかもしれませんが、判断力が低下しているのでホールなど他に多数の利用者さんがいる中でお茶を服にこぼしてしまった際、全裸になったり、他の利用者さんのご家族のスカート捲りをして走って逃げるなど、まるで子供みたいと言われる方がいます。

 確かに認知症になる前と比べると明らかに行動が昔の状態に戻っており、それまでとは想像もつかないことをされる時も珍しくありません。例えばそれまでタバコを吸わなかったのに認知症になって何故か吸いたくなる。これは20代の時に吸っており、それを思い出したと思われます。他にも子供の頃の遊びベーゴマやメンコなどを夢中でやられる方も居ます。

 そういった経験からか「子供だから仕方ない」「注意してもわからない」と考え、曖昧な対応をしているため、利用者さんは「何をしてもいい」と思ってしまい、それが性的行為にも及んでしまうのです。

 例え子供だとしても悪いことは悪いと注意すればきちんと理解できます。認知症の方でも忘れてしまっているだけなので思い出すことは出来ます。Tさんの場合は性的行為に及んだ際に「嫌です止めてください」と注意を行いました。これは全ての女子職員が共通して行いました。そうでなければダメな人と大丈夫な人がいて利用者さんも混乱してしまいます。それを続けていくことでTさんもしてはいけないと理解し抑制するようになりました。

 注意して止めるまで期間としては3か月くらいです。性的行為に及ぶ原因として判断力の低下があります。善悪の判断が出来なくなっているのです。そこで日中活動の中に簡単な計算問題やパズル・塗り絵など頭を使う脳トレを取り入れることで判断力を回復させることが出来ました。それにより職員の拒否を受け「やってはいけない事なんだ」と理解したようで、徐々にしなくなっていきました。

 しかし、これらは完全とは言い切れず拒否しても性的な行為を止めない時もあります。その時の対応は、既に奥さんが亡くなっているのですが「触ってはいけませんよ、奥さんに言いつけますよ」と言うと「〇〇には言わないでくれ」と謝ってきます。

まとめ

 認知症による性的行為は頻繁に発生するため一々対応していてもキリがないと諦める方がいますがその判断が最悪の事態を招いてしまう可能性もあります。過去に60代の男性利用者さんが施設内で性的行為に及んでいたことがありました。しかし職員は曖昧な対応を続けていたために、本人はそれが悪いことだと再学習せず、自宅に一時帰宅していました。その際に外に出ている時に20代の女性を触ってしまい、警察沙汰になったケースがありました。

 そのため性的行為に関しては曖昧な対応をしてはいけません。利用者さん=お客様と考え注意しない方も居ますがどんなサービス業でもしてはいけないことは存在します。お客様だからと言って何をしてもいいわけではありません。駄目なことには明確な拒否をできるようになりましょう。

[参考記事]
「認知症の人が性的な言動を繰り返す場合にはどうしたらいいの?」

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