行きつけの居酒屋に来なくなったことから認知症が発覚した事例を紹介します。
Kさん(男性・76歳)はとある地域で、一人で暮らされています。ほぼ毎日、アパートの近くにある居酒屋に行っていました。しかし、ある日を境に全く姿を見せなくなりました。
居酒屋に来ていた常連客が民生委員に相談
しばらく姿を見せず、居酒屋の常連客も心配になっていましたが、まあそんな時もあるだろうと初めは気にもしていなかったそうです。しかし、ある日に道の花壇で寝ているKさんを見かけ、声をかけました。どうやら道で転倒して花壇に突っ込んで動けなかったとのこと。
居酒屋の常連客も最近Kさんの様子がおかしいという話になり、近くに住んでいる地域の役員に相談したそうです。その地域の役員の方は民生委員でもあったため、すぐKさんに話をしに行きました。
3日間食事もしておらず、家賃の支払いも遅れる
民生委員がKさん宅へ伺うと、Kさんはコタツで寝ていました。起き上がったKさんと話をしていましたが、どうやら3日間ほど何も食べておらず、歩くのがしんどくて、コンビニすら行けないと言っていたそうです。
Kさんのアパートのすぐ近くに大家さんが住んでいるのですが、先月までは支払い期日までに必ず家賃を持ってきてくれたのに、今月は期日が過ぎても支払いがないので心配だったそうです。
とりあえず民生委員や居酒屋の常連客たちがKさんの家におにぎりを持って行ってあげたり、しばらくは地域の方たちで支えていました。しかし毎日は大変なのと、Kさんの会話の時代背景がおかしいと思うことがあり、どうすればいいのか地域包括支援センターに相談することになりました。
病院を受診し、認知症と診断される
民生員からKさんを紹介してもらい、地域包括支援センターの職員がKさんの支援をすることになりました。Kさんは職員に対して拒否などもなく、すぐにKさんと一緒に病院へ行くことができました。そこで認知症診断を行うと、やはり疑いありとのこと。
お弁当宅配サービスを利用し安否確認
しかしKさんは介護保険の申請すらしていなかったことがわかり、すぐに申請しましたが、認定調査も含めると1ヶ月以上はかかるとのこと。
Kさんの状態だと判定が出てもおそらく要支援か要介護1が出ればいい方だとの見解もあり、介護サービスを先出しで使わずに、お弁当の宅配サービスを利用することにしました。
このお弁当の宅配サービスでは介護サービスを提供するわけではありませんが、毎日お弁当を届けてもらえますし、その時に様子がおかしければ行政へ通報するシステムになっています。
介護保険が使えない高齢者や、介護サービスは使いたくないが安否確認だけはしてほしいという方には使えるサービスです。
要介護1の判定に伴い、必要なサービスが決定
後日、Kさんの介護度が決定しましたが要介護1の判定でした。
Kさんは着替えや排泄はご自分でできましたが、入浴や部屋の掃除、買い物などはできなくなっていました。
そこで週にデイサービス2回と、買い物と部屋の掃除のために週2回訪問介護サービスを利用することになりました。入浴はデイサービスで入れますし、週2回ヘルパーさんに来てもらい、お弁当も毎日宅配されるのでKさんの見守り体制を確立させることができました。
地域住民の重要性
今回、Kさんにはたくさんの見守りの目がありました。行きつけの居酒屋、民生委員、アパートの大家さん。これらの見守りがあったからこそ、Kさんの異変にも気づくことができ、必要なサービスを提供することができました。
もちろん専門職が対応すべきことではあるのですが、表に出て来ないケースは対応が難しいのが本音です。やはり地域の方が最初に相談してくれることにより、専門職も対応することができます。
高齢になると飲みすぎはよくないですが、行きつけの居酒屋など自分を見守ってくれる居場所があるのはとてもいいことですね。
[参考記事]
「母の認知症に気づいたきっかけは腰痛でした」
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