この記事では、お金に対して執着が強いアルツハイマー型認知症の人を例に挙げて対応策を紹介します。
この人はとても穏やかな性格の87歳の女性Aさんです。今はデイサービスを利用されていてレクリエーションや入浴など、拒否することなく行ってくれます。
しかし、急に顔つきが変わり、何度も自分のかばんの中身を確認しに行ったり、落ち着きがなくなる時があります。これはAさんがお金を盗まれたかもしれないと思ってのことです。自宅でも現金や通帳、そして財布をあらゆるところに隠してしまうようです。
対応策はまずは利用者さんの話を親身に聞くこと
毎日介護されているAさんのご家族は、介護で手一杯になり、なかなか親身にAさんと話をする機会が持てないという状況です。このような状況が認知症の症状を悪化させる場合もあります。
この状況を少しでも緩和できるよう、まずはスタッフが利用者さんへ「どうしましたか?」など優しく声掛けをし、親身に話を聞くことが重要です。話を聞いた上で、利用者さんに落ち着いてもらえるよう声掛けをする対応を取ることが大切です。
今回の場合、私はAさんに対して「デイサービスは万が一の事を考えて、貴重品などは持ってきてはいけない決まりなので、家に財布はあります。ご家族に電話して家に財布があるかどうか確認したらあったみたいですよ。」と声掛けしたところ、落ち着いて席に戻りました。
しかし、この声掛けだけでは、また席を立ってかばんを確認しに行くこともあったので、「かばんを席に置いておきましょうか?」と尋ねたところ、Aさんはそれがいいと言われたので、座っている椅子にかばんを掛けました。その後は、かばんの中身を見ることなく、落ち着いて利用されました。
お金に執着してしまうのは、何かしらの不安があるがゆえに起こります。家族との関係が良くなくお金しか信じられない、お金に対して苦労してきたなど、理由は様々ですが、不安な状況を少しでも和らいでもらえるように、声掛けや対応をすることが、お金の執着の緩和へとつながります。
ご家族の協力が重要
いくらデイサービスで声掛けをして落ち着いていても、家ではまた違う不安材料が生まれ、通帳を隠したり現金を隠したりしてしまいます。その為デイサービスでの様子や声掛け内容をしっかり伝え、家では通帳や現金などを利用者さんの目の届かない所での保管をお願いしました。
しかし、ただ目の届かない所で保管するだけでは、利用者さんはお金がなくなったと不安になり、探し周り兼ねません。そのような事態にならないよう、「最近物騒だから、通帳とお財布は泥棒に盗まれないように保管しておくねー。必要な時は言ってね。」など、何度も声掛けするようにご家族にも協力をお願いしました。デイサービスだけの対応だけでは限界があるのです。
家で騒がなくなったと安堵していた
その後、ご家族から何度も声掛けをするうちに、「家で探し周ったり騒がなくなった」と、少し安心された表情で報告をくださいました。ご家族やご本人の不安や負担を少しでも減らし、明るく暮らせるよう、私達介護スタッフは、これからも手助けをしていきます。
[参考記事]
「お金の心配ばかりをしている認知症の人への対応」
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