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失禁で汚れた服を隠してしまう認知症の人の対応。蓋付きの容器を用意

 

「汚れた服をそのままタンスへしまってしまう」
「汚物のついた下着をどこかへ隠してしまう」

 これらは認知症の人に非常に多い行為です。

 汚れた衣類をそのままにしておくと、悪臭の元になったり、カビが生えたり、虫食いの原因になったりして、衛生上よくありません。今回は、認知症の人が汚れた服を隠してしまう理由と、その対応策についてくわしく書いていきたいと思います。

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■汚れた服を隠してしまう理由とは?

 いちばん多いのは、尿失禁や便失禁などで衣類を汚してしまった場合に、「人に知られたくない」「恥ずかしい」という羞恥心から、服を人目に付かない場所へ隠すケース。

 あとで見つからないように自分で洗おうと思い、自分のタンスなどに入れてそのまま忘れてしまう場合や、後先を考えずにとにかく早く隠そうと、突発的に目に付いた物陰や引き出しの中に隠す場合などがあります。

 服を汚してしまった罪悪感や、失禁をしてしまったという羞恥心からこのような行為に及んでしまうと考えられますが、汚れた服はたいへん不衛生なので、施設側としては何とか防ぎたいところ。

 では、いったいどうすれば汚れた服を隠してしまう行為を防ぐことができるのでしょうか?実際の介護施設での事例をもとにお話しします。

■汚物が付いた服をあちこちへ隠すYさんの話

 Yさん(80代女性)は認知症ですがとても陽気な性格で、施設では仲の良い利用者も多く、非常に社交的な人です。

 しかし、トイレで排泄を失敗して服を汚してしまうことがたびたびあり、そのたびに服だけでなく、トイレの床や壁、便器にも汚物が付着してしまうため、朝と晩の1日2回はYさんの衣服やトイレの汚れをチェックするなど、施設側でも注意深く見守っていました。

 一番困っていたのは、Yさんが汚れた服をバスタオルなどに包んでタンスの奥や棚の引き出しなどに押し込んでしまうことです。タオルに包まれていると臭いで気付くことができず、また表は洗濯済のきれいなタオルなので、職員もつい見過ごしてしまい、なかなか見つけられずに日にちが経ってしまうことがありました。

 Yさんの衣類が見当たらなくなり、「おかしい」と職員が部屋を探し回ると、あちこちからバスタオルに包まれた服が見つかり唖然としてしまったことも。

 汚れた服はすぐに洗えば大抵の場合はキレイになりますが、日にちが経ってしまうといくら洗っても汚れが落ちずシミになってしまいます。また汚物の付着したものが何日も放置されているのは非常に不衛生です。

 ある時、Yさんの服が談話室のテレビ台の後ろに隠されていたことがあり、それを見つけた他の利用者が自分のものだと勘違いして、部屋に持ち帰ってしまうというトラブルがありました。

 今後もこうしたことがあっては大変と、Yさんのこうした癖を何とかするため対策を考えました。

■汚れた服を隠してしまうことへの対応

 排泄の粗相というのは誰であれ他人には知られたくないものです。汚れた服を隠そうとする心理は当然のことなので、それなら施設側が隠す場所をあらかじめ用意しておくのはどうだろうか?ということになりました。

 そこで、服が何着か入る大きさの蓋付きの容器(バケツ)をいくつか用意し、Yさんの部屋のタンスの脇やトイレの中に置いてみることに。

 Yさんが服を汚してしまい「どこかへ隠さなくては」と思った時に、目の前にその容器があれば、Yさん自ら服を入れてくれるのではないか?と期待しました。

 蓋が付いているので、服を中に入れて蓋を閉めてしまえば汚れた服がYさんの目に留まることもありません。

 このやり方なら、Yさんの自尊心をそれほど傷付けることなく、衛生面も改善されるため、非常に良い方法だと思いました。

 その結果どうなったかと言うと、Yさんの方から自発的に服を容器の中に入れてくれることもありましたが、やはりまだタンスや棚の奥にタオルに包んで押し込んでいることもあり、すんなり解決というわけには行きませんでした。

 でも、まったく無効というわけでもないため、今後もYさんの衣服のチェックやタンスや棚のチェックなど、職員がフォローしながら、Yさんにも少しずつ「汚れた服は容器に入れる」という習慣を身に付けてもらえるよう、うまく誘導していきたいと思っています。

■最後に

 誰であっても、汚してしまった服を他人に見られるのは抵抗がありますし、ましてや女性であるYさんにとってはプライドが許さないことだと思います。

 職員はその気持ちを汲み取り、Yさんが自尊心を保って生活できるように最大限の配慮をしていくことが大切です。

 また、排泄の粗相に関しては、紙おむつを利用するなど別のアプローチも必要になってくると思うので、時間をかけて丁寧にケアを進めていきたいと思います。

[参考記事]
「認知症高齢者の失禁に対する解決策。膀胱に溜まっている尿量を測定」

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