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認知症により暴力や暴言を繰り返し、対応に限界を感じた事例

 

 認知症高齢者の中には、他者へ暴力や暴言を繰り返す方がいます。ご家族や介護者にとって介護が嫌になってしまう原因の一つです。

 今回は認知症を持つBさんの暴力や暴言の事例を紹介します。

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Bさんの人物像と日常生活

 Bさんは89歳になる小柄な女性でアルツハイマー型認知症です。旦那さんが亡くなってから一人暮らしをしてました。それが、季節感が分からなくなったのか、夏でもコートを着たり、繰り返し同じ事を言うようになり、ご家族様の提案でデイサービスへ行く事になりました。

 ただ、デイサービスに行く曜日が分からなくなり、近所の方へ朝方何度も聞きに行ったり、また夜中、雨の中、傘もささずに家族を探しに出かけて警察に保護される事があり、それをきっかけにグループホームへ入居される事になりました。

 Bさんの性格は思った事はすぐやらないと気が済まない。「帰る」と思ったらすぐ行動に移す。「お腹空いた」と思ったら、職員に何時であろうと「早く出せ、金払ってるんだから」と言います。また入浴が好きで「風呂入れろ」と言いますが、認知症のため入浴後30分もすれば、「風呂入れろ」と何回も繰り返し言います。

暴力・暴言のきっかけ

 そんなBさんでしたが、数年経ち、足が弱ってきて歩行にフラツキが見られるようになってきました。それに対して手を貸そうとすると一部の職員に対しては好意的ですが、ほとんどの職員に対して「近寄ってくるな」と毛嫌いし、結局は遠くから見守る形になりました。

 そんな中、ある日の夜間帯、一人の時に転倒してしまいました。不幸中の幸いですが、座り込んだ形で倒れたので頭も打ってません。ご家族様はとてもご理解のある方で、「母の性格なら転んで怪我しても仕方ないです。他の入居者さんもいらっしゃいますし、職員の方の頑張りは十分理解しているつもりですから、気にしないで下さい」と言って下さいました。

 とは言ってもその後、裁判になるケースもあるため、一応その旨を生活記録(ご家族のご理解を得たと)に書かせて頂きました。それで、僕は今まで通り、見守る形で支援しようと思いましたが、会議では「プロとして、関わりを増やして防げる転倒は防がないといけない」と決まりました。しかしここから暴力・暴言が始まりました。

暴言・暴力の具体例

 まず、真面目な女性職員がターゲットになりました。転倒を防ぐために「大丈夫ですか?」「転んだら危ないので一緒に行きましょう!」等の声掛けをしていましたが、Bさんは「うるさい!豚!ついてくんな!」と暴言を吐き、持っている杖で殴る行為を見せました。

対応策

 基本的に男性職員に対しては拒否がないのですが、女性職員に対しては拒否・暴言・暴力が続きました。

 歩けない自分にイライラしている可能性があるので、声を掛ける時には、自然な感じで、仕事として転んだら大変だからという感じでなく、家族のような気持ちで世間話をしながら見守りを行なうようにしました。ただ、一度悪いイメージがついた職員にはどんな声掛けしても暴言や暴力を繰り返しました。認知症の人は悪いイメージはなかなか忘れないものです。

 そこで、職員だけの対応では限界を感じましたので、転ばないように夜中立ち上がる時の足元に滑り止めを敷いたり、杖に依存して体重を乗っけるためご家族様に杖を預かって頂きました。

結果

 対応策の結果、半年程は比較的穏やかで転倒なく過ごされていましたが、その後、Bさんが歩いている前に他の入居者さんがいるだけで「邪魔だ!どけ!」と手をあげる行為が見られました。

 ここまでくると我々では手に負えないので精神科に相談し、抑肝散とリスパタッチを処方されました。もともと、薬が嫌いな方でしたので、抑肝散の粉薬とオリゴ糖を混ぜて提供していました。しかし、余計に拒否が強くなっただけではなく、水分も摂らなくなり、病院入院となり退去されました。今でも、どう接すれば良かったのか?と心残りです。対応の失敗事例を紹介させていただきました。

[参考記事]
「介護拒否や暴力を振るってしまう認知症の人への対応」

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