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重度認知症の人の症状とは。介護士として体験した事例を紹介

 

 認知症の人に対してよく使われる表現の1つが「軽度の認知症」とか「重度の認知症」という言葉です。認知症に対する「軽度」「重度」の一定の判断基準はありますが、実際のところ確固たる定義はありません。しかしながら介護する側が対応に困惑してしまうのは「重度の認知症」と呼ばれる人です。

 では重度認知症の人には、どのような症状が出現するのでしょうか?介護士として実際に関わった重度認知症ご利用者様の事例をご紹介します。

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重度認知症の人の多くに共通する「指示が全く伝わらない」

 重度認知症の総論のような話にはなりますが、重度認知症の人の多くは「指示が全く伝わらない」ことが多いです。(「指示」という言葉は、認知症の人の尊厳を疎外するような言葉で不適切かもしれませんが、介護の専門職間ではよく使われる表現の1つですので、ここではご容赦ください。)

 短い会話さえ成立せず、介護士が工夫した声かけをしても、全く違った返答しか返ってこなかったり、工夫したはずの声かけが、かえってその人の不穏状態を招いてしまうのが度認知症の人に多い症状です。

事例①土を食べられてしまった

 これは、施設レクリエーションで陶芸を行ったときの事例です。

 何らかの介護系資格を取得した方は、講義やテキスト学習で「認知症の人には異食行為がある」ということを学んだと思います。私も学んだ1人でした・・・が、対応に失敗してしまったのです。

 ある認知症の女性のご利用者様の顔を見たら、口のまわりが黒っぽいのです。最初は何で黒いのか分かりませんでしたが、数秒後にその人がこんな言葉を発しました。

「かりんとうだと思ったけど味がしないな」

 その言葉を聞いた瞬間、私は「陶芸の土も異食対象になるんだ」と気がついたのです。講義やテキストでは異食されやすい物として「ティッシュなどの紙類」「花」などが紹介されることが多いのですが、まさか陶芸の土を食べられてしまうとは・・・。

 幸いにして健康被害はなく、そのご利用者様は何事もなかったようにお過ごしになられましたが、重度認知症の症状の事例の1つとしてご紹介させていただきました。

事例②「自宅のガラスを割って『家に帰る』と外へ出る」

 デイサービスの帰りの送迎で、男性ご利用者様(重度認知症と言われていた人)をご自宅にお送りしました。ご家族様に出迎えられ、私と、ペアの介護士は送迎車両に乗り込もうとしたとき、「ガシャーン!」という音と、顔から血を流しながら道路に出てきた男性ご利用者様。そしてそのご利用者様は「ここは家でないから、家に帰る」という言葉を発したのです。

 これは重度認知症の人が「自宅を認識できなくなってしまった」という事例です。しかもこの人は、自宅のガラスを頭からつき割って自宅を脱出(?)したという、かなりの重度認知症と言えます。

 取り急ぎ担当ケアマネージャーに連絡し、何とか受診対応までつなぐことはできましたが、困難事例の1つでした。

事例③「手洗い場に放尿」

 この人の場合は「尿をする」という行為、動作はできるのですが、便器を認識できず、必ずといってよいほど、トイレ内の手洗い場に放尿してしまうのです。

 尿意があるので、介護士が便器に誘導しようと思ったときには手遅れで、手洗い場から外れた尿が、トイレ内に飛び散ったことも多々ありました。

 この人への対応は、トイレの手洗い場を隠すことで、便器で尿をしてくださるようになりました。

専門の医療機関を早めに受診する

 認知症は、生活環境をその人向けに整えたり、関わる人の対応によって、症状が軽くなると言われてはいます。

 しかし、上記のような「手に負えない」「対応が難しい」と介護する側が感じた場合は、介護する側だけで悩まず抱えこまずに、早めに専門の医療機関を受診することをおすすめします。

 最近では、精神科病院などに認知症専門外来を設けているところも増えてきました。また認知症は、あくまでも脳内の病気であるので、専門の医療機関を受診することは恥ずかしいことではありません。むしろ、介護する側だけが悩み抱えこんで過度な介護ストレスを溜めてしまう方が良くありません。介護する側だけで悩み抱えこまずに、適切な医療を受けることも、介護を長続きさせるための選択肢の1つです。

 今回ご紹介した内容が、重度認知症の人のご家族様や、関わる介護士への参考になれば幸いです。

[参考記事]
「私(介護職員)がお世話をした重度の認知症の方々」

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