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アルツハイマー型認知症の症状と特徴について

 

 アルツハイマー型認知症の原因は、はっきりとは分かっておらず様々な説があります。有力であるのは、脳の中に老人斑(異常タンパク)が蓄積し、神経細胞が変化することで脳が障害されるという説です。また、これらに加齢や遺伝的要因、環境などが絡み合って発症するとされています。また、認知症の中には、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがありますが、アルツハイマー型認知症が一番多く半分以上を占めます。

 アルツハイマー型認知症の特徴は、いつ始まったのかが分かりにくく、徐々に進行していくことです。初めは、最近忘れっぽくなったかなという些細な変化から始まり、進行すれば日常生活に支障をきたすようにもなります。このような特徴であるため、なんとなく以前とは違うと感じても年のせいだと考え、医療機関を受診するのは症状が出現してから数年後ということも少なくありません。また、徘徊などでケガや骨折をして、その治療で訪れた医療機関で認知症ではないかと指摘されることもあります。

 アルツハイマー型認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:BPSD)」の2つに分けて説明されることが多いです(これは他の認知症の型でも同じです)。中核症状は、記憶障害、見当識障害、実行機能、判断力の障害など、誰にでも起こるものです。一方BPSDとは、妄想、抑うつ、幻覚、無気力、徘徊など多岐に渡ります。BPSDはその人の性格や環境(住んでいる場所や人との関係性など)によって症状が異なります。また、認知症の進行具合によって、症状が出現する時期や程度が大きく異なってきます。

 ひとつずつ症状の特徴を見ていきましょう。

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記憶障害

 記憶にはいくつか種類がありますが、アルツハイマー型認知症の初期では、短期記憶が障害されます。短期記憶とは、数十秒~数分の短い期間の記憶のことです。具体的には、同じことを何度も話す、薬を飲み忘れるといった症状がみられます。日常生活では料理の本を見ながら、メニューを作ることもできなくなります。

 初期の頃は、長期記憶といわれる数日~数十年の長い記憶は比較的保たれています。なので、最近の出来事よりも、昔していた仕事や習い事などの話をすることが多くなることもあります。

 また、加齢による物忘れと認知症による記憶障害には、大きな違いがあります。例えば、ご飯を食べたことは覚えているけど、何を食べたか思い出せないというのが加齢による物忘れ。そして、ご飯を食べた出来事自体を忘れているのが、認知症による記憶障害です。これは、「エピソード記憶」の障害です。エピソード記憶とは、出来事や体験による記憶のことです。認知症が進行し、中等度~重度になると、エピソード記憶の障害が著明にみられ、長期記憶の障害もみられるようになります。

見当識障害

 見当識とは、時間、日付、場所(今いる場所)、季節、周りにいる人の事など「今」の認識状況をいいます。アルツハイマー型認知症の初期では、今何時であるか、今日の日付や曜日、あまり会わない人が分からなくなります。進行とともに、今月は何月か、今年は何年か、よく行くスーパー、家の近所なども分からなくなります。もっと進めば、家の中のトイレや洗面所、家族のことも分からなくなることもあります。このような順に見当識障害は進行します。

実行機能、判断力の障害

 私たちは、ある目的を遂行するために計画を立て、手順を踏んで実行していきます。途中で計画通りにいかなければ修正したり臨機応変に対応できます。例えば、カレーを作るとします。いつも夕飯を食べる時間に間に合うように逆算して、行動しますよね。足りない食材を確認して買い物に行き、食材を切り、炒めて、煮ます。それが、実行機能や判断力が障害されると、家にあるのに食材を買い足してしまう、食材を焦がす、作るのにものすごく時間がかかるなど、計画が立てられない、手順が抜けてしまう、臨機応変に対応ができないなどの症状が見られます。

 また、季節やその場にあった服装ができなくなるのも特徴です。私たちは、今日はいつもより寒いから上着を一枚足そうなどと考えますが、その判断が難しくなります。暑い日にダウンジャケットを着たりすることもあります。

失行

 運動麻痺や筋力低下など体を動かす機能は問題ないのに、目的に合った行動ができなくなります。体は問題ないですが、脳の機能が損傷を受けるために起こります。代表的なものを以下に挙げます。

・観念運動失行
 ジェスチャーなどの行動を無意識下ではできるが、意識するとできない。専門的には

「自動運動は可能であるが意図的な運動はできない状態」

と説明できます。例えば、人と別れるときに自然に手を左右に動かすことはできるが、「さよならするので、バイバイしてください」と言われるとできなくなります。

・観念失行
 個々の物品の名前や何に使うかは分かっているが、一連の操作ができない。専門的には

「個々の運動はできるが、複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害される」

と説明できます。例えば、急須にお茶っ葉を入れる、そして、それを茶碗に入れて飲むという「一連の動作」が出来なくなります。

・着衣失行
 服をうまく着れなくなる。例えば、ズボンを腕に通そうとしたり、ボタンを違うところにかけてしまいます。

失認

 視覚や聴覚に問題はないのに、見たり聞いたりするものが分からなくなります。
・視覚失認
 物を見てもそれが何であるのか分からない。しかし、耳で聞いたり、手で触ると分かるのが特徴です。そういう意味で「視覚」が「認」を「失っている」ので、「視覚失認」と呼ばれています

・相貌失認
 馴染みのある人の顔が分からないが、声を聞けば誰か分かる場合もあります。これも視覚失認と同じで、声を耳で聞くことで「この人は〇〇だ」と認識できる時があります。

失語

 聞く・話す・読む・書くなどの言語の操作に障害が出ることをいいます。声を出すのに必要な器官(構音器)に問題がないのに、言語機能に障害が出ます。特にアルツハイマー型認知症に特徴的なのは、健忘失語です。見慣れたもの、使い慣れたものなのに、その名前が出てこなくなります。例えば、ポストのことを、「ポスト」という名前が分からず、「あの赤いもの、四角いもの」と表現したりします。「これ、あれ」などの「こそあど言葉」も多くなります。

BPSD

 BPSDには、「妄想や誤認」などの思考面、「抑うつや不安」などの感情面、「幻覚や錯覚」などの知覚面、睡眠や覚醒リズムの障害、意欲・自発性の低下などの症状があります。これらの精神症状に合わさって、徘徊、不穏、攻撃性などの行動面の障害が出現します。

 これらは、誰にでも同じように出現するわけではありません。その人の過去や現在の環境、元々の性格、周りの人の接し方で症状や程度が左右されます。

代表的なものを以下にあげます。

・妄想
 事実ではないことを信じ込むのが特徴です。例えば、アルツハイマー型認知症では、「お金を盗まれた」などの物盗られ妄想が多くみられます。他にも「夫が浮気をしている」などの妄想もあります。

・意欲低下
 意欲が低下し、何事にも興味を示さなくなった状態をいいます。今まで毎日お花に水をあげていたのにお世話をしなくなり枯れていた、など毎日の日課や趣味などにも無関心になります。

・幻覚
 そこに存在しない刺激を知覚します。例えば「子供が庭で遊んでいて騒がしい」「家に着物を着た人が大勢いる」などです。アルツハイマー型認知症では、初期の頃は幻覚の頻度は少なく、中期以降にみられることがあります。

・徘徊
 歩いて、外などに出て行ってしまう状態をいいます。老人ホームの中や自宅内で、ひたすら歩いていることもあります。建物の中であればいいですが、外に徘徊に行ってしまうと帰ってこれなくなることが多くあります。警察が把握しているだけでも年間1万件以上あります。

 一見すると何の目的もなく歩いているように見えますが、本人にとっては目的があることが多いです。例えば、夕方になると家の外に出てどこかに行こうとするけど、特にどこかに行くわけでもなくうろうろしている状況があるとします。家族からすると、どこに行くわけでもないし、事故やケガが心配だからやめてほしいと思うかもれません。でも実は、昔から夕方の決まった時間に買い物に行き、夕飯を作ることが日課だった。そのため、道が分からなくても日課をこなそうとする、本人にとっては大事な行動ということもあります。

 このように、BPSDは様々な背景のもとに出現します。

[参考記事]
「夜間に徘徊をする認知症の人への対応事例」

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