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認知症による物盗られ妄想とはどんな症状なのか

 

 財布や通帳など大切なものなどをどこにしまったかを忘れてしまい、誰か他の人に盗られてしまったと思い込んでしまうのが物盗られ妄想です。

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物盗られ妄想が起きる原因

 認知症の中核症状(ほとんどの認知症の人に起こる症状)の原因のひとつとして、記憶障害があります。記憶障害によりどうしても思い出せない(思い出せないというより、記憶そのものがすっぽりなくなっている)状況があり、なおかつ、認知症特有の「被害妄想」が重なることで、誰かに盗られてしまったという物盗られ妄想が起きてしまいます。

単なる物忘れとの違い

 「家の鍵が見当たらない」というように、自分がものをしまった場所を思い出せないというのは単なる物忘れです。後で「あっそうだ。ズボンの中だ!」と思い出す場合もあります。物忘れであれば、高齢者の方でなくても経験があると思います。

 もちろん高齢者の方は加齢により物忘れが多くなってしまいますが、単なる物忘れであれば認知症の症状ではありません。

 物盗られ妄想の場合は、しまった場所が分からないのではなく、どこかにしまったという記憶そのものがなくなっている状況で、そこが単なる物忘れとの違いです。すっぽり記憶が無くなっている状態ですので、「物が見当たらない」イコール「盗まれた」と思ってしまいます。

物盗られ妄想の特徴

 盗んだと疑いをかけられるのは介護を行っている家族が多いです。また、自宅に来る機会が多いヘルパーさんに疑いの目が向けられることもあります。

 盗まれたと思いこんでしまうものは、通帳や財布、ダイヤモンドなど、本人にとって大事なものが多いようです。物盗られ妄想が出るのは男性より圧倒的に女性の方が多いです。

物盗られ妄想に対する対応

 物盗られ妄想は親身に介護を行っている家族に対して疑いの目が向けられてしまうため、介護者にとってはとてもストレスがたまってしまう症状です。時には「ここにあるでしょ!!しっかりしてよ」と怒ってしまうこともあるでしょう。

 ですので、本人と介護者双方の充実した介護生活を送るために、介護者がこの症状についてきちんと理解し対処していくことが必要となります。

①感情を受け止める
 介護をしている最中に急に「〇〇を盗んだだろう」と疑いをかけられた場合、どうしても否定したくなってしまいます。盗んだという事実はないので否定したくなる気持ちもわかりますが、なるべく否定しないようにしましょう。

 本人は盗まれたと妄想しているため、これを否定してしまうと「盗んだ」「盗んでいない」の押し問答になってしまいます。その結果、本人に余計なストレスがかかってしまい、さらに妄想を強めることにつながってしまいます。

 否定するのではなく、本人の気持ちを受け止めてあげるようにしましょう。「失くなってしまったんだね。それは悲しいよね」というように本人の気持ちに同情し、受け止めてあげるだけで症状が治まる場合もあります。

②一緒に探してみる
 本人と一緒に探してあげることも効果的な対処方法のひとつです。その際は、他の家族を呼んで複数で探したり、本人が見つけられるような工夫をするとより効果的になります。介護者が先に見つけても「ここにあるよ」と言わない方が無難です。「やっぱり、あなたが盗ったんだね。この盗人め」となりかねません。ですので、本人が先に見つけられるように「あそこにあるかもしれないね」とさりげなく誘導することが大切です。

③別の話に変える
 話題をまったく別の物に変えてしまうことも効果的な場合があります。物盗られ妄想が出ている場合は興奮状態にあることが多く、一旦別の話題で本人を落ち着かせることが有効です。「お菓子があるのですが、一緒に食べない」など、とくかく他の話にすり替えることが大切です。

 別の話題で本人を落ち着かせているうちに、物盗られ妄想の訴え自体を本人が忘れてしまうというようなことはよくある話です。その間に盗まれたと思っている物を認知症の本人に分かる場所に置いておくといいです。

適切なサービス利用

 物盗られ妄想に対処するのはどうしても家族が多いです。実際に介護を行っている家族は、盗んだ疑いをかけられても冷静に対処することができるかと言えば難しいでしょう。

 できるだけ住み慣れた自宅でずっと生活をしたいというのはほとんどの方が希望することだと思います。しかし、在宅介護を無理して続けた結果、介護者に大きな負担がかかってしまうことは好ましくありません。

 本人と家族が安心して生活を続けていけるように適切なサービスを利用していくことも大切なポイントです。

 例えば、認知症対応型通所介護というデイサービスがあります。このサービスは要介護1以上の認知症の診断を受けた方が利用できる認知症専門のデイサービスです。通常のデイサービスよりは利用定員が少なく(12人以下)、認知症介護の研修等を受講した専門の職員が働いているため、手厚い介護サービスを受けることができます。介護サービスはレクリエーションや機能訓練などをして身体の残存機能を維持する目的があるのですが、それと同時に介護者の休む時間を確保する意味もあります。

 身近な介護者が物盗られ妄想について理解し、適切な介護保険サービスを利用しながら介護を続けることで、本人と家族に負担の少ない幸せな介護生活を送ってたいただければと思います。

[参考記事]
「認知症による物盗られ妄想(被害妄想)に対する対応とは」

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