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認知症の物盗られ妄想における対処療法と根本療法について

 

 私が勤めているのは1階がデイサービス・2階が高齢者共同住宅ですが、この施設で起きた物盗られ妄想の実例とその対応・対策を書きます。

 Tさん(78歳女性)は脳梗塞を起こし、その後遺症により半身麻痺(歩行器により歩行可能)と脳血管性認知症があり、認知症の症状として物盗られ妄想がありました。

 「洋服が無くなった」と言っていますが、一緒に探すと出てくるので、誰かがTさんの部屋に入って移動をしていると思っていました。次第にTさんは、職員が洗濯物を間違って他の入居者様の部屋に持っていっているのではないか、と思っていました。そして、職員がわざとどこかに隠しているのでないかと妄想にまで発展をしました。

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物盗られ妄想に対する対処療法1

 最初の頃は、本人から訴えがあったら、否定をせずに部屋の中を一緒に探していました。しかし実際の所、他の入居様が持って行ってしまったり、職員が洗濯物を配布する際に、他入居者様の引き出しに配ってしまったこともありました。

 ですので一緒に探すのですが、その前に何が無くなった、どんな不満があるのかを傾聴するように心がけました。もちろん、現在進行形で洗濯をし、干している洗濯物もあるので、Tさんには今洗濯して干しているところなので、夕方になったら乾くと思いますよという声掛けと実際にその現場に連れて行って納得をしていただくことにしました。Tさんが、納得して安心して頂ける環境を作りを目指しておりました。

物盗られ妄想に対する対処療法2

 それでも、物が無くなると言ってくる場合があり、不信感は消えていませんでした。次の対策として職員の間でTさんの出された洗濯物は必ずメモを取り、本人と確認することにしました。Tさんの反応として最初はご納得いただいていたのですが、次第に「職員がメモを書き損じているから紛失することがあるのだ」と言うようになりました。

 上記の対策としてTさんが洗濯物をお持ちの際に、1つの洗濯物に対して2枚同じメモをTさんの目の前で写し、その1枚をTさんに預けて洗濯物の引き換えにその紙をもらうように変えてみました。

物盗られ妄想に対する対処療法3

 その後、Tさんから洗濯物に対して無くなったという訴えはなくなりました。しかし、職員への不信感があり他入居者様に、ここの職員は物を無くしたにもかかわらず弁償してくれない・ほかの人にあげてしまう・知らない間に荷物を探っているということを言うようになりました。次第にTさんは全ての荷物を持ち歩くようになりました。

 対策としてTさん以外触ることができないように鍵のついたロッカーを購入し、鍵をご本人で管理していただくようにし(首に紐をぶら下げて鍵を管理)、職員や他入居者様は一切触ることができないことを納得していただきました。

 その時、気を付けた点として、職員から鍵のついたロッカーをご本人様に提案するのではなく、ケアマネジャーから提案していただくようにしました。それにより職員が鍵を持っているのではないかという考えにならず、Tさまに納得して頂くことが出来ました。

 その後、荷物を持ち歩く事がだんだんと減って最終的にロッカーの中に入れているから大丈夫と言うようになり、盗られるまた、無くなるという不安感がなくなりました。

 また職員に対する不信感も無くなった様子で、穏やかに日常過ごしていただけるようになりました。「今日デイサービスで○○やってきたよ」等の日常会話等の発言を共同住宅の職員にするようになりました。

まとめ

 物盗られ妄想ある認知症の人の対応として、不安の点を探り取り除くことが大切です。最終的には職員として頼られる人になることを必要とし、物が無くなった場合この職員だったら不安や不満のことを話しても大丈夫だという信頼関係を築く必要があります。「物が無くなった」という発言の背景にあるのは人を信用できていない現状があるからです。認知症で忘れっぽい人でも、人に対する悪い印象は忘れないものです。

 治療に例えるなら鍵付きのロッカーやメモを渡すのは対処療法、信頼を築くのは根本療法と言えるでしょう。根本療法を目指すことは言うまでもないですが、その前の信頼作りとして対処療法も悪いとは言えません。

[参考記事]
「認知症による物盗られ妄想の対応。言葉かけを統一することの重要性」

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