認知症には中核症状と周辺症状があります。
中核症状は
記憶障害・見当識障害・判断力低下・実行機能障害・失認・失語・失行
があり、それに付随して起こる
幻覚・妄想・徘徊・異食・攻撃的行動・暴言暴行・不穏状態・不潔行為・ケアへの抵抗
などが周辺症状です。
中核症状は個々で程度の差がありますが、いずれかの症状は認知症であれば誰にでも起こります。それに対して周辺症状は全ての認知症の方に起きるわけではありません。
今回は周辺症状の中の異食を取りあげて、対応方法などについて説明をしていきます。異食行為とは文字通り、食べることができない鉛筆などを口に入れて食べようとする行為です。
異食行為の具体例
認知症の周辺症状の中の異食行為は、認知症が進行したからといって誰にでも現れる症状ではありません。出現割合も、他の周辺症状と比べると低いものです。
ただ、異食とは、食べられないものを口に入れる、飲み込んでしまう行為であり、他の周辺症状より危険性や困り感が非常に強いものです。
食べてしまう物は様々ですが、それこそ身の回りのすべての小物が対象です。例えば紙類、ボタン、ゴム、スポンジ、おもちゃ、布団の綿…。ビニールや金属などを飲み込んで窒息で亡くなってしまったケースもあります。洗剤などを飲み込んでしまうと中毒を引き起こすので非常に危険です。
オムツや排泄物までも!
認知症の人が口に含む・飲み込むのは置いてある品物だけに限りません。自分が履いている紙おむつをちぎって食べてしまう人もいます。水分吸収剤のポリーマーがあちらこちらに散乱している状況に介護者は絶句します。もちろん、ポリーマーを口にするのは危険な行為です。
そして、一番ひどいのが糞便などの排泄物を口に入れてしまうことです。これも異食です。親を介護する身内にとって、糞便を食べている親を見るのは耐えがたいのはもちろんの事、本人の尊厳にも関わります。
異食行為の原因
周辺症状の原因ははっきりしたことは言えませんが、認知症の中核症状である失認などが影響して、食べ物とそうでないものの区別がつかない事、また食欲や満腹中枢が正しく働かない事が基礎としてあります。失認などが元で起こっているので、単純にお腹が減っているから、というものではありません。
失認とは、目や耳、皮膚や鼻などの感覚器官は正常であるにも関わらず、対象を正常に認識できなくなってしまっている状況のことです。
人間は目で物を見たり、鼻で匂いをかいだり、耳で音を聞いたりし、物事を認識しています。例えば、見ることでそれが鉛筆だったり、〇〇さんなどと認識できますよね。その他にも音を聞けば車が近づいているなどと分かります。
失認症状がある方は、見ているものがなんなのか分からなかったり、聞こえてきているものがなんの音か理解できないという状況です。
心身の健康
認知症の人は、記憶も理解力もなくなり、何もかも分からなくなると誤解をされている方もいると思いますが、そんなことはありません。調子が良い時には忘れていた人の名前を思い出すこともあります。ですので、異食を含む周辺症状の出現は、その人の精神的、身体的な状態が大きく影響するといってもいいでしょう。
例えば今まで長年住んでいた家から施設へ移るときに、自分がどこにいるのかが分からない不安から精神が不安定になるときがあります。こういう時には周辺症状の悪化が伴いますので、特に注意して見ていなければいけません。
他にも認知症による行動が原因で家族が怒ってばかりいると精神が不安定になり、さらなる周辺症状の悪化が見られるようになります。
怖い、さみしい、悲しい、つらい、身体が不調であるという状態が、異食行為などの普通ではない行動として現れるのです。
異食行為へ対応策
異食行為への対策ですが、まずは、周辺に口に入れると危険なものを手の届く所に置かないなど環境面へのアプローチが基本となります。
介護者がやってはいけないことは異食行為などがあった時に強い口調で叱ることです。怒ることで悪い感情だけが残って、さらに異食行為を含む周辺症状を悪化させてしまいます。その場には収まっても、また繰り返してしまうことになります。
そして、万が一飲み込んでしまった場合には病院に行って処置をしてもらい、健康に影響がないかどうかを調べてもらいましょう。便を食べてしまう異食行為をした時には口を徹底的に洗浄液で洗ってください。口の中が綺麗になりそうにない場合には歯科医院に行って、洗浄をしてもらってください。
[参考記事]
「認知症の周辺症状はどのような症状なのか」
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