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認知症による見当識障害が原因で部屋で放尿してしまう人への対応

 

 認知症のKさん(71歳男性)はグループホームに入居され1ヶ月の利用者さんです。グループホーム入居前はご自宅で奥様が介護をされていました。身体能力に問題はありませんが、早くからアルツハイマー型認知症を患い、発症から10年が経過している為、認知能力が低下し、意思の疎通は難しい状態でした。

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排泄障害

 認知症により認知能力が低下すると、トイレの場所や使い方が分からずトイレで排泄を済ます事ができなくなってしまいます。以前から使用していた自宅のトイレでは問題なく一人で排泄を済ます事ができても、それ以外の慣れていないトイレでは使用の仕方が分からなくなり、人の手を借りる必要がでてきてしまう事があります。認知症の方は、新しい情報を覚え、順応して行く事が難しいという面があるからです。

 Kさんは就寝してから起床までの間にいつも3回程トイレの為に目が覚めていました。目が覚めて起きあがってもトイレには向かわれず、部屋の洗面台かその下にあるゴミ箱へ放尿してしまっていました。

 1時間毎の巡視にて職員が部屋へ伺うと、尿臭があり発見に至ります。Kさんは部屋の中でに立ちつくしており、どうして良いのか分からないご様子でいらっしゃいます。洗面台やゴミ箱の中に上手に排泄を済まされている訳ではなく、パジャマのズボンに排尿がかかって汚れ、床も排尿が飛び散り汚れている状態です。

 Kさんはトイレの為に目が覚めて起きる様ですが、そこからお一人でトイレに向う事はできないようでした。これは認知症による見当識障害が原因と思われます。見当識障害になると時間や季節の感覚が薄れ、慣れた場所や人も分からなくなります。

排泄についての観察

 まずはKさんについて、日中の排泄の様子から改めて確認していく事にしました。日中のほとんどの時間リビングで過ごされています。すると、突然立ち上がり急ぎ足でどこかへ行ってしまわれました。

 見かけた職員が後を追っていくと、ズボンの前側をしきりに気にして落ち着かなくなっています。トイレの方へ一緒に向かい、トイレの戸を開けて立ち便器にご案内すると、ご自分でズボンを少し下ろし、立って排泄を済まされました。立ち便器は慣れている様で上手に使用され、汚してしまう事はありませんでした。

 このように、日中に至っては排泄の前兆を職員がキャッチする事が出来る環境にある為、トイレに案内する事が出来ていました。夜間においてトイレで排泄を済ます事が出来ないのは、トイレの場所を探しているKさんに職員が気付く事ができないのが大きな原因であると分かりました。

部屋の環境整備による対応

 夜間は職員1人体制になります。その一人がKさんの部屋でつきっきりに目覚めるのを待つわけにはいきません。Kさんがベッドから起きた後、お部屋から出てきやすい様な環境に変える試みを行っていきました。

 まずはお部屋の中に置いてあったゴミ箱に一番放尿する機会が多かったので、ゴミ箱を撤去してみました。すると、タンスや窓際など至る所に放尿をされる様になりました。ゴミ箱を取り除いても、部屋から出てトイレに向かう事はありませんでした。

 次に、部屋から出てすぐの廊下の電気を夜間も点けてみる事にしました。Kさんが就寝した後、わずかに部屋のドアの隙間を開けて、中から廊下の電気が点いているのが分かるようにしました。また、ベッドは部屋の置く側にありドアから離れていたので、ドアの近くに移動をしてみました。

 すると、Kさんは夜間部屋から出て、トイレに行こうとする素振りを示すようになりました。廊下を歩いている所を職員がキャッチして日中と同様にトイレにご案内出来るようになりました。豆電球1つの暗さで寝ていたKさんは、廊下の明かりに導かれて部屋から出てくる事ができ、見当識障害による居室での放尿は減少しました。

[参考記事]
「認知症による弄便とは。便が口に入っていることも」

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