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認知症による物盗られ妄想の対応の失敗例

 

 認知症によって出現する症状の1つが「物盗られ妄想」です。

 「物盗られ妄想」は、認知症の症状では「周辺症状」と言われる症状であり、認知症の方すべてに出現する「中核症状」とは異なります。周辺症状である物盗られ妄想の出現率は全体の2割程度と言われており、認知症初期の女性に多いと言われています。

 物盗られ妄想は、介護する側が「ドロボー」「盗人」呼ばわれされるので、介護する者(ご家族様や介護士等)にとっては精神的に介護がしんどくなる要因になります。しかし、対処する方法がないわけではありません。そこで今回は「認知症による『物盗られ妄想』体験談と、その対処方法」について触れてみます。

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「アンタがお金を盗んだんだ!」と怒鳴られる

 物盗られ妄想に関する私(介護士)としての実体験を1つご紹介します。

 私がまだ介護士としての経験が浅かった頃、入所施設である認知症のご利用者様から「アンタが私のお金を盗んだんだ!」と怒鳴られた事があります。

 その入所施設では、認知症のご利用者様も多かったため、新規入所時にはご家族様に「金品や貴重品の持ち込みはご遠慮ください」ということを基本にしていました。当然、そのご利用者様も現金は持っていませんでした。

「私ではありません」と言い返してしまった失敗談

 「アンタが私のお金を盗んだんだ!」と怒鳴られ、当時、介護士としての経験が浅かった私は、真っ向から「私ではありません」と、そのご利用者様に対して否定をしました。

 ところが「私ではありません」と言い続ける程、そのご利用者様はますますヒートアップするかのように「いや、アンタしか盗んだ者はいない!」と、怒鳴り声がますます大きくなっていったのです。

 そんな状況を察してくれた、先輩の介護福祉士が「〇〇さん(そのご利用者様)、一緒に探してみましょうよ・・・」と言いながら、そのご利用者様との関わりを変わってくれました。

 その少し後で、先輩の介護福祉士から教わったことは「物盗られ妄想のご利用者様に対して、否定的な言葉は使わないこと」「傾聴の姿勢を忘れないこと」でした。

物盗られ妄想は認知症の症状であると冷静に理解する

 上記でご紹介した私の失敗談は、実は物盗られ妄想のご利用者様への関わり方として典型的な失敗する関わり方です。

 物盗られ妄想は、認知症という脳内の病気の症状の1つであることを介護士は忘れてはいけません。病気の症状として、冷静にかつ穏やかに対応することが大切です。

 私は「私ではありません」と、正論を述べたのですが、認知症のご利用者様をますます怒らせてしまう結果となりました。その失敗と先輩介護福祉士からアドバイスをもらって以降は、仮に盗人呼ばわりされても、否定せずに「それはすみませんでした、もう一度一緒に探してみましょう」といったような関わり方に変えるようにしました。

 すると、ある程度時間は要しますが、物盗られ妄想のご利用者様から「なんだかわからないけど、アンタに悪いことしたねー」という言葉を発してもらえたのです。

 物盗られ妄想に対して、介護士は冷静にじっくり穏やかに関わることの大切さを実感した瞬間でした。

『物盗られ妄想』体験談と、その対処方法」まとめ

 物盗られ妄想は、介護士自身が盗人呼ばわりされるため、関わる介護士にとっては精神的にしんどいときもありますが、認知症という症状の1つとして、介護のプロとして冷静に穏やかに関わることが大切です。

 また、入所施設などチームメイトが身近にいる場合は、関わる介護士を変えるという方法も有効な対処方法になる場合があります(上記でご紹介した、先輩介護福祉士のような方法です)。

 今回ご紹介した内容が、物盗られ妄想のご利用者様に対する関わり方、対応で悩んでいる方の参考になれば幸いです。

[参考記事]
「認知症の周辺症状はどのような症状なのか」

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