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入浴を拒否する認知症の人への対応の成功例と失敗例

 

 今回は介護施設での入浴を拒否するTさん(89歳女性、初期のアルツハイマー型の認知症)のお話。彼女は眼科医である旦那様の手伝いの傍ら、料理教室や茶道教室を開いており、とても活動的な生活を送っていた。性格は好き嫌いが激しく、物事をはっきり言う

 認知症により短期記憶が少し欠けているものの、職員の顔や同じ時期に入所した利用者の名前などは覚えている。

 日常生活では、朝起きてからの整容やパジャマからの着替え、トイレに行った時の汚染パッドの交換など、身の回りのことは一通り自分でやることは出来ていた。しかし、入浴だけはスムーズに行かず、面倒くさい、実際は入っていないのに『昨日入ったからいい。』と、拒否される事が多かった。娘様からの情報で、お風呂は元々好んで入る人では無かったとある。しかし、入って仕舞えば『気持ちが良かったー』と笑顔が見られる。

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入浴拒否への対応の失敗例

 Tさんのいる施設では、入浴する曜日は決まっているが、細かい時間は特に決まっておらず自由に選択する事が出来た。今までの入浴の様子を振り返ってみると、午前中に声を掛けた時の方が比較的入浴してくれる事が分かった。また、Tさんの部屋に『火曜日と金曜日はお風呂の日』と張り紙をし、入浴の日が決まっていることを、Tさんに意識付けを行った。

 別の日、Tさんを午前中に入浴に誘うが、この日の1回目の誘いは『面倒だから入りたくない。』と断られてしまった。時間を置いて再度入浴の誘いを行うと、『今日って何曜日?』と訪ねて来た。フロアのカレンダーを指差し、今日は火曜日であることを伝えると、部屋の貼り紙を思い出したのか、しばらく何か考えている様な様子を見せたあと、『て事は、今日はお風呂の予定だったって事だ。』と、呟いた。すかさず職員が、『そうです。だから入りましょう。』と手を握るが、やっぱりその日は面倒だからという理由で、入浴する事は出来なかった。

入浴拒否への対応の成功例

 そこで部屋にあるカレンダーを活用してはどうか?と職員より提案があった。カレンダーの、入浴の予定日である火曜日と金曜日の日付けに赤丸をし、予定通り入浴出来たら丸を塗りつぶす。出来なかった日はカレンダーの印はそのまま何もせずに、翌日へ申し送る。

 カレンダーを見れば一目で分かる様になっている為、拒否された日の翌日は、Tさんの入浴予定日ではなかったとしても、入浴担当の職員がTさんに入浴を、意識的に進めることが出来る様になった。また、Tさんが一度拒否をした場合でも、カレンダーを見てもらい『昨日入っていないから、今日入っておきましょう。』と説得する事で、納得して渋々ではあるが入ってくれる事が増えてきた。

 カレンダーを活用する事で、職員の間でも意識的に声をかける事が出来るようになり、Tさんも面倒くさい気持ちはゼロではないにしろ、理解して入浴してくれる様になった。また話好きなTさんにとって、職員と一対一でお話ししながら入れる事が楽しいと感じてくれる様で、入浴に対するマイナスなイメージもだんだんと薄れていった。

 現在は、100パーセント入浴を予定通りしてくれる事は難しいにしても、以前に比べたら断られる確率も減り、何より入浴中は楽しんで色々な昔話をしてくれる様になった。
旦那様の話をしながら、『いつかまた、若い時に行った温泉旅行みたいに夫婦で温泉に入れたらいいねー!』とはにかみながら話してくれた事は、とても印象的であり、近いうちに叶えてあげたいと思った。

[参考記事]
「入浴拒否がある認知症の人への対応。原因は髪の毛だった」

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