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見当識障害と徘徊の症状がある認知症の人への対応事例

 

 グループホームに入居されている男性(70歳)Nさんの見当識障害と徘徊の事例。

 Nさんはアルツハイマーと診断されて、グループホームに入居されました。とても口数の少ない大人しい方で、日中はソファーにじっと座ってテレビを見て過ごされています。

 声かけに対し、無表情でうなずくか、「うん」「トイレ」等の単語程度の言葉しか発せられず、なかなかコミュニケーションが取りづらい方です。

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見当識障害

 トイレや居室の場所を覚えることが出来ず、ホール内をうろうろと歩き回ります。トイレの前を素通りしたり、他利用者の居室へ入ってしまうことも頻繁にありました。これは認知症による見当識障害の症状です。見当識障害は自分のいる場所、季節感、時間感覚が分からなくなる障害です

 なので、何かを探している素振りがあると、こちらから「トイレですか?」と声かけし誘導するようにしていましたが、時折恥ずかしそうな、気まずそうな表情をされるため、自分でトイレに行けるよう、「お便所→」という張り紙をFさんの視界に入る場所に数枚張りました。そうしたところ、張り紙を見ながらスムーズにトイレに行けるようになりました。

 トイレに行きたいのに場所が分らない・・・その不安さを解消したところ、少しだけではありますがNさんの緊張感が取れたように見えました。

徘徊

 ある日、Fさんが急にソファーから立ちあがりホール内をうろうろされ出し、声かけしても無表情で何も答えません。ただよく観察すると何かを探しているような素振りは見られます。

 「何か探しものですか?」と聞くんですが、何も言わずどんどん険しい表情になっていきます。この頃からNさんの徘徊が始まりました。スタッフの「どうかしましたか?」「何か探しているんですか?」「テレビでも見ましょう。」という声かけにいらつきが見え出し、声を荒げたり、スタッフの差し出した手を振り払うことが増えてきました。

 ほぼ毎日のように険しい表情でホール内を歩き回っていたNさんですが、その日はいつもと違い、ジャケットを着て帽子をかぶり、不安な表情で居室より出てきました。玄関まで来ると、Nさんがそわそわしながら小さな声で「ない」「ないよ」とポケットの中を何度も触りながら言われます。

 その時スタッフは、以前Nさんがタクシーの運転手をしていたことを思い出し、車の鍵を探しているのでは・・・と思いつき、「鍵ですか?」と聞くと「うん、鍵。」とぼそっと言われました。スタッフが持っていた自分の鍵を渡すと「ああ。仕事行けるね。」と、ほっとした表情をされました。

 アルツハイマーと診断されるまでは、タクシーの運転手として毎日仕事に出かけていたNさん。きっと以前はいつも鍵を持ち歩いていたのでしょう。

 ご家族に相談して、以前本人が使用していたキーケースを持って来てもらい、お渡しすると、鍵が手元にあることで安心したのか、その日より何かを探すことはなくなり、ホール内をウロウロと歩き回ることが減りました。

 また普段の表情にも穏やかさが見え、スタッフの声かけにも少しずつですが笑顔が見られるようなってきています。

[参考記事]
「認知症の周辺症状はどのような症状なのか」

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