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意思疎通が全くできない認知症の人に対する入浴への対応

 

 Dさん(女性)は自宅で夫婦2人だけで過ごしていましたが、2年前から認知症の症状が見られるようになりました。特に見当識障害が強く、自分がどこにいるのか、そして最終的には旦那さんの事も分からなくなってしまい、「知らない男が家にいる」と、警察に電話をしてしまう事もありました。

 このままでは夫婦での生活は難しいとの事で、介護付き有料老人ホームに入居する事になりました。

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会話が成り立たず、介助が難しい

 Dさんは介護付き有料老人ホームに対する抵抗はありませんでした。なかったというよりは、状況に対しての判断が難しくなっていたのです。職員が自己紹介をしても話しかけても、見当違いの発言をされたり、目線を合わすような事もなく、意思疎通が全くできませんでした。食事や入浴の時間に声を掛けるだけでは理解が出来ず、居室からは手を添えて一緒に移動する事が必要な方でした。

 浴室を見てもこれから何をするかの理解は出来ない為、洋服を脱ぐ事を嫌がり怒ってしまいます。しかし必ずしも怒ってしまうわけではなく、職員の声掛けと介助で洋服を脱いでくれる事もあります。やっとお風呂に入っていただくことに成功しても湯船から出ることを拒否し、まったく立ち上がろうとしない事もありましたので、対応はすごく難しいのです。

 長湯でのぼせてしまう事を心配した職員は最終的になんとか引っ張り上げるような形で上がってもらいましたが、今後こう言う状況が続いてしまうとDさんの命の危険にも繋がるのではないかと、不安を覚えたのです。

優先すべきこと

 意思疎通ができない時の対応は非常に難しいです。会話がかみ合わず、こちらの話を理解していない為、思いは全く伝わりません。言葉で伝わらないときは紙に書いて見せることも対応方法の一つです。

 しかしDさんの場合、紙に書いて見せても上手くいく事はありませんでした。状況判断が出来なくなっている為、文字に起こしても理解するのは難しかったのです。

 こういった場合には、理解をしてもらう事を優先せずに、事故を起こさないように介助する事を最優先して介助を行います。入浴時の事故は最悪の事態になる可能性が十分にある為、しっかりとした対応が必要になります。

 Dさんの場合はどこで立腹するか分かりません。どこで拒否が見られるかも分かりません。かといって入浴をしないという事は出来ませんので、対応を考え続けていました。

どう入浴の対応をするべきか?

 対応方法としては、先ほどお伝えしたように安全を第一に考えました。Dさんの機嫌が悪そうと感じた場合には、入浴を中止して、清拭対応に変更して対応しました。

 ただし、清拭のみだとどうしても汚れが残ります。そんな時には時々シャワー浴での対応をするようにしました。特に夏場の暑い時期にはシャワーで体を流し、洗髪・洗身の介助を行うと、しっかり清潔の保持が出来ます。

 逆に冬場は寒いので、シャワーで対応するのは難しいと判断しました。その時は車いすの人が利用する機械浴槽を利用して対応する事にしました。機械浴槽は、時間を管理してお湯を抜く事が出来るので、のぼせたりする事はないので安心です。

 Dさんの状況に合わせながら職員は対応し、安全に入浴を行う事が出来るようになりました。相手の状況に合わせた介護方法をしっかりと確認する事が大事です。

 今回は意思疎通ができない認知症の人に対して安全面を第一に考えて対応した事例でした。

[参考記事]
「入浴拒否がある認知症の人への対応。原因は髪の毛だった」

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