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認知症による徘徊の対応について。徘徊を止めてはいけない?

 

 今回は認知症の周辺症状である「徘徊」の対応について説明します。「徘徊」は時には事件や事故を招いてしまいます。以下では、私の体験を述べました。介護には正解はありませんので、ひとりひとり、徘徊に対して、どのように対応すればいいのか、ということを考えながら読んでいただければと思います。

 Yさんは、私が介護職に就いてから初めて徘徊された利用者さんです。Yさんは、90才後半の長老の女性です。Yさんの認知症は重く、会話はほとんど成り立ちませんでした。しかし、食事や、服やスボンの着脱は自立で、歩行もよろよろしながらではありますが、杖をついて歩ける状態でした。先述のように、会話は成り立ちませんでしたが、こちらが言ったことは理解できていました。そのため、トイレ誘導やお風呂への誘導等は出来ていました。

 そのようなYさんですが、懸念しなければならないことがありました。それは、Yさんが患っていた病気です。Yさんは心臓病を患っていました。医者からも薬の処方が出ており、ほとんど毎日、貼りつけるタイプの薬を皮膚に貼っていました。ですので、徘徊することで心臓に負担がかかるのではないかと心配をしていました。

 冒頭でも述べましたが、Yさんは私が介護職に就いてから初めて徘徊をされた方です。私は、幼い頃より祖父母と一緒に暮らしていました。祖父は認知症を患い、徘徊も行っていました。認知症を患うと徘徊を行うということは知っていましたし、実際に体験もしていました。しかし、家で体験する徘徊と、施設で体験する徘徊は全く違うものに見えました。同じ徘徊が違うものに見える一番の原因は、家族か、家族ではないか、の違いだと思います。

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徘徊の対応

 認知症による徘徊の対応策として、徘徊する人には何らかの理由があるので、その理由を聞くことが大事であると述べています。これは、家族や親族など自分と近しい人で、会話が成り立つ人には有効です。しかし、会話が成り立たなかったり、職員と利用者のように一時の付き合いしかない人にはとても難しい対応策だと思います。実際、Yさんの場合は、会話が成り立たないので、「何かありましたか?」「どこをお探しですか?」と聞いても答えが返ってくるはずはありません。従って、理由を聞くという対策は使えませんでした。

 一方で、私はYさんとのやり取りの中で行ってはいけないことをしてしまっていました。それは、「徘徊を止める」ということです。徘徊者には何かしらの理由があるので、止められると、気分を害し、最悪の場合、怒りに変わってしまいます。

 その頃、Yさんの心臓病は深刻になりつつありました。それを危惧した私は、徘徊をするYさんを出来るだけ施設から離れないように引き止めてしまったのです。しかし、この時、Yさんには何かしらの目的があったのだと思います。私の引き止めるという行動に不信感を抱いたYさんは、だんだんと怒り出してしまいました。怒りの感情を抱いては、もう、手に負えなくなります。

 結局、私は、Yさんのしたいようにさせるしか無くなってしまいました。そして、ある程度、歩いたYさんは、「一息つきたい」と言い、座りました。その後、気が済んだYさんは、それ以上徘徊することなく、施設に戻ることができました。私はこの事より、「歩きたい」と思われる認知症利用者の方には寄り添い、気が済むまでとことん一緒に歩くという対応が一番良い選択肢なのではないかと思いました。徘徊を続けている間に、目的を忘れてしまい、疲れたから帰るというパターンになることが多かったです。

 もちろん、この方法は施設に人的な余裕がある場合のみ有効です。家族介護でも時間がある人がいなければできません。

[参考記事]
「認知症の周辺症状はどのような症状なのか」

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