この記事ではグループホーム入所者による暴力行為についてお話しします。
暴力行為の背景
私が勤めるグループホームの入所者は9人。男性3名に女性6名です。
入所中のBさん(70代男性)は、紳士的で穏やかな性格。他の男性入所者とはあまり会話はされませんが、職員や女性入所者さんの手助けをよくして下さいます。「自分はここにいる人とは違う」というプライドも高く、職員の手を介することは嫌いますが、時折、失禁をあり、それを隠します。
また、他の女性入所者を居室に連れ込む事があります。これらに対するBさんへの対応としては、干渉し過ぎず、でもしっかり目を配って、今のBさんができている行動、したい生活を続けられるように見守っていました。
しかし、ある日の夕食中、男性入所者Cさん(70代男性)がBさんと仲の良い女性入所者さんに話しかけました。それを見たBさんは急に立ち上がり、杖をCさんに振り上げて掴みかかりました。慌てて職員が間に入り、杖を取り上げ、Bさんの手をほどこうとしますが興奮しているせいで手を離しません。職員をも睨み、さらに力が強くなる一方でした。
職員が二人がかりで「いい加減にしてください。みんなびっくりしてご飯が食べられません」と言うと、Bさんは興奮しながらも手をほどき、息を荒げながら居室に帰り鍵を掛けて閉じこもってしまいました。
その後、時間を置いてから職員が眠前薬を持って居室を訪ねると、Bさんは鍵を開けて、「すまんかったね」とだけ言われました。認知症のため翌日には前日の事はお忘れの様子でした。
ただ、居室外でCさんの姿を見ると表情が険しくなり、顔がみるみる赤くなっていたので、職員が間に入って、Cさんを違う場所へ連れて行くようにしていました。恐らくBさんは前日何が起こったのかは正確には覚えていませんが、「理由は分からないが嫌」という感情をCさんに感じていたのでしょう
それから数日後、或る時Bさんの姿がないことに気づきました。ホーム内を探し回りましたがどこにもおられず、もしかしてとホームから徒歩30分程の、Bさんが以前一人暮らしをされていた家へ探しに行くとその近くで見つかりました。以前の家とは外装が変わっており、Bさんは疲れ果てた表情で立ち往生されていました(この家は売却済み)。
職員の顔を見ると、バツが悪そうな顔をして「悪かったなあ」と職員の車に乗られました。ホームへ戻ると待っていた職員に「心配かけて悪かったな」と疲れた表情で居室に戻られベッドに横になられました。
Bさんの「家に帰りたい」というストレスが積もりに積もって、Cさんに対する暴力行為に至ったのではないかと思います。表面的に見ると「自分の女に手を出すな」という思いで暴力行為をしたと思いますが、ストレスがなければここまでの行為はしません。
暴力行為の対応策
Bさんには、同じ市内に住む息子様ご夫婦と7歳のお孫さんがおられ、1か月に1度面会に来られ外食に行かれます。上記の出来事をご家族に電話連絡させていただくと、後日お嫁さんが来所されました。
昔から穏やかなBさんが暴力行為をしようとしたことが信じられない様子でした。お嫁さんから、ホームからの外出時の様子などを伺うと、Bさんはご自分の事はあまり語らず、家族の話を聞く事がほとんどですが、おそらく本心ではホームではなくて、家に帰りたいと思ってるんだと思うと話されました。
お嫁さんは他にも、「以前住まれていた家を処分している事は認知症により忘れているかもしれない」「家族で同居する事は難しいけど、面会の機会を増やして、思っている事を聞いてストレス発散になるように考えてみます」と言って下さいました。それ以降、1か月に1回だった面会が3回に増え、Bさんが持っている感情やストレスを少しでもなくせるように日々努力をしてくださいました。
それから、Bさんの暴力行為はありませんでしたが、Cさんとの折り合いは悪いので、職員がCさんとの間に入るようにしていました。
まとめ
認知症の人の行動には、必ず原因やきっかけがあります。今回は家に帰りたいというストレスが爆発した結果、暴力に繋がってしまいました。
暴力行為の相手が職員である時はその場所から一旦離れて本人に落ち着いてもらう時間を置いて、様子を見るのが先決です。そしてその後、その行為に至った背景について職員間で情報共有をはかり、暴力行為の原因やきっかけに繋がる物や事柄を本人から離すことが大切です。
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