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認知症による徘徊はなぜ起こるのか。どんな対応をすべきか

 

 徘徊は何故起きるのでしょうか。徘徊、という症状を理解するには、まずは認知症とはどのようなものであるのかという事を改めて正しく理解する必要があります。

 認知症には、中核症状と呼ばれる症状が存在します。中核症状は記憶障害、判断力障害、見当識障害、実行機能障害、失認、失行などに分類され、認知症であれば何かしらの症状を持っています(詳しくは「認知症の中核症状とはどのような症状なのか」)。徘徊は、これらの中核症状が絡み合いながら現れる「周辺症状」に分類されます。

 例えば見当識障害により、今いる場所が分からない場合、家に帰るために外に出て行ってしまうかもしれません。例え自宅に居ても、昔住んでいた「今は無き思い出の家」に帰るために歩いて出て行ってしまう可能性もあります。これが周りから見ると「徘徊」と映るのです。

 その他にも家族との関係が良くないため、家に居たくないという理由で歩き回ってしまうこともあります。

 つまり、認知症の症状+周りの環境が合わさって徘徊が起こります。

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徘徊をする人の内面を知る

 徘徊に対して適切な対応を行うためには、徘徊をする方の想いや気持ち、すなわち内面性を知る事が最も大切です。年齢や性別、性格、価値観、文化観、生まれや育ち等、同じ人は一人としていません。

 認知症の当人の内面性を知らずして対応を図る事により、却って症状を悪化させるだけなく、対応の困難性を招く事にもなりかねず、それでは適切な対応とはかけ離れてしまいます。

 一見、徘徊は「目的もなく歩き回っているだけ」と見えてしまいますが、そうではありません。例えば昔やっていた畑仕事のために畑に向かっているだけかもしれませんし、数十年前の習慣で子供を迎えに行くために駅まで歩いている途中かもしれません。

 ですので、対応者は徘徊を正しく知る事と同時に、目の前の人そのものにもしっかりと目を向けていく必要があるのです。ただボケて歩いているわけではないということです。

徘徊の根底には不安があることも

 更に徘徊を理解する上でもう一つ重要なポイントがあります。それは「不安がある」という事です。認知症の人の心の中には常に不安があると言われています。我々が日常生活を不安なく過ごせる理由として、過去から今現在までの事を正確に記憶し、今の状況に対して判断ができているからです。

 しかし、認知症の人はどうでしょうか。先に述べた記憶障害、見当識障害により、現状の判断ができなければ「今どうして自分がここにいるのか」あるいは「今何をすれば良いのか判別がつかない」という心理状況に突然陥ります。これでは不安になりますよね。

 具体例として、飛行機に乗り外国に行くイメージを浮かべてください。貴方は飛行機に乗り目的の地まで向かっています。しかし、エンジントラブルのため他の諸外国に一時留まる必要が出たとします。さて、まったく見知らぬ地に降り立った自分。ここがどこの国で、どのような文化を持ち、どんな言語を話しているのかも分からず、日本との連絡手段もない。それでいて日本に戻るための飛行機の目途も立たない。

 このような状況であれば、人は誰でも不安になるのではないでしょう。近代においてこのような状況で稀でしょうが、このような状況下に一人ぽつんと取り残された我々は一体次にどのような行動を取るでしょうか。おそらく大抵の人は話ができそうな人を探す。あるいは、移動手段である飛行機や連絡手段を必死に探そうとするのではないでしょうか。

 これは認知症による徘徊でも同じことが言え、今置かれている状況に対して不安であるために、安全な場所、安心できる空間を探そうとするのです。それは昔住んでいた家かもしれませんし、馴染みのある「習慣」かもしれません。

適切な対応とは何か

 自宅でも、介護施設でも、徘徊は起こり得る事です。そこで重要なのは、対応者が安心な人物であるという事をまずは示す必要があります。そのためには、驚かせない、大きな声で話しかけない、優しい笑顔で同じ目線で話す等のコミュニケーション技術も重要となってきます。やはり不安が強ければそれだけ警戒心も強くなるためです。

 認知症の当人が疲れているようであれば椅子に腰かけて頂き、ゆっくりとお話をして落ち着かせたり、身体的に問題はないかをさりげなく観察することが求められます。その上で、当人が何に困っているのか、どこに行きたいのか、という気持ちを探っていきます。

 同時に、施設であれば中核症状のどの分野に障害が見られるのか、それも観察していきます。記憶障害はあっても、判断力が正常で問題がない人に、徘徊時の教科書的対応である「嘘や話題をそらす等」は却って不信感を招きかねません。この嘘や話題をそらすというのは、当人に安心して頂くためによく用いられることがありますが、認知症を正しく理解しないままその場しのぎで使ってしまうのはよくはありません。従って、正しい認知症の理解が求められるのです。

 徘徊を行っている方に対して、無理やりにでも徘徊行動を止める必要があるのかと言えば、これはケースバイケースとなります。例えすべて教科書通りの対応方法を実施したとしても、それでも解決しないこともままあります。そのような時は、対応者を変える、当人の身体的な安全性が確保されているようであれば、そのまま見守るという対応も時には必要となってきます。施設であれば人員の不足により付いて回ることが難しいですが、自宅介護であれば以上の対応も可能でしょう。

[参考記事]
「認知症による帰宅願望に対してどのように声掛けしたらいいのか」

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