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入浴拒否をされる認知症の人への対応。音楽を活用した事例

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 Hさん(76歳女性)はアルツハイマー型認知症により特別養護老人ホームに入所しています。70歳を過ぎた辺りから認知症を発症されました。認知症が進行するにつれて家族と日常生活を送ることが困難になり、入所する運びになりました。

 特別養護老人ホームでは日中、食堂の席で居られテレビを見たり、時折鼻歌を唄われたりと、表情はニコニコされながら過ごされています。しかし意思の疎通が少し難しいところがあり、他の入居者さんと言葉を交わすことはありません。

 今回はHさんの入浴拒否の様子と対応策によりその拒否がなくなった事例をお話します。

入浴拒否の様子

 普段は温厚なHさんですが、入浴日に入浴の声掛けを行うと表情を曇らせて、首を横に振り入浴拒否されます。介護職員2人でなんとかHさんの機嫌をとり脱衣所まで誘導しますが、いざ脱衣の介助を行い始めると拒否され、ときには暴力を振るうこともあります。このようなことはHさんだけではなく認知症の人であればよくあることです。

 そこで少し間を置き、Hさんの様子を見て機嫌を取りながら、入浴介助を行っています。しかしHさんの表情は、終始固くこわばったままです。このままでは、Hさんにとって入浴は、苦痛でしかありません。また職員にとっても負担が大きくなるので、対応を考えました。

入浴拒否の原因と対応策

 まず入浴拒否の原因を考えてみました。日頃Hさんは、他の入居者さんとの関わりがほとんどなく一人で過ごされています。入浴日の脱衣所は常時5、6人の入居者さんや職員が出入りし、脱衣所自体もそんなに広くなく、ざわざわした雰囲気になっています。その脱衣所の雰囲気に不安になり嫌がっているのではないかと考えました。確かに入浴日の脱衣所は、私たち介護職員から見ても落ち着いた雰囲気ではありません。認知症の人の中にはこういうざわざわした雰囲気により不穏になる方もいます。

 そこで対応策を考え、Hさんの入浴を大浴場から個室の浴室に変更することにしました。しかし脱衣所は共用なので他の入居者が少なくなる入浴時間の最後のほうに順番を変更し入浴して頂くようにしました。またHさんは歌を唄うのが好きなので、脱衣所に音楽プレイヤーを置いて、Hさんが好みそうな音楽を流してみることにしました。

 そして入浴日、まずHさんに「お風呂に入りませんか。」と声をかけるのではなく、「少し歩きませんか。」と声掛けを行い、散歩に連れ出しました。散歩のルートは脱衣所まで遠回りする廊下を歩きました。脱衣所では音楽プレイヤーで音楽を少し廊下に聞こえるボリュームで流しておきます。

 そして脱衣所に近づき音楽が聞こえ始めたところで、Hさんに「歌が聞こえてきましたね。ちょっと、寄って行きますか。」と声を掛けました。Hさんは「うん。」と頷き一緒に脱衣所に入りました。Hさんと私は、一緒に長いすに腰をかけ少しの間、歌を聴きました。聴いているHさんの様子を見計らって私は個室の浴室を指差して「丁度一番風呂が空いているので入っていきませんか。」と声を掛けました。そうしたら入浴拒否もなく「うん、入る。」と言われたので脱衣介助を行い、Hさんを浴室に誘導しました。

 Hさんは嫌がる気配もなく浴室に入られました。初めて入る浴室を珍しそうに見られ、そのあと一部洗身介助で体を洗い、湯船に入られました。Hさんは機嫌がいいのか微笑みながら鼻歌も唄われていました。そのあとも脱衣所を出られるまで、いつもと違い機嫌のよい様子でした。音楽の効果でしょうか。

まとめ

 Hさんが入浴拒否する原因となるものを考え、なるべく排除してみました。その原因は混み合った雰囲気の脱衣所でしたが、そこをHさんが好みそうな雰囲気(音楽をかけること)に変えたことで入浴拒否がなくなりました。結果としてHさんにとって良い入浴を提供できたと思います。良い結果を導き出せることができたのも、Hさんの記録や本人、職員から得た情報を元にカンファレンスで計画を立案できたからだと思います。音楽が好きであることはご家族からも聞いていまし、特別養護老人ホームに入所されてからも感じていました。今回は成功した対応だったと思います。

 認知症の方が入浴拒否など何かを拒絶されるのには原因があります。しかし意思の疎通が難しいところがあるので、その方が「どう在りたいのか」、「何を欲しているのか」が分かりにくいです。そんな認知症の方に私たち介護者は答えなければなりません。その時その時の状況を記録し、本人の言動、行動と今取り巻いている状況を考慮して本人のニーズを抽出し、介護を実施していかなければなりません。

 そして、なるべく早めの対応が必要だと思います。私たち介護職員は普段どうしても仕事に追われてしまうことが多いです。入居者さんの日々の変化に早めの対応することは入居者さんのためですが、私たち介護者のためでもあります。早めの対応は重労働と言われる介護の仕事を円滑に進め、介護職員の負担を軽減するためでもあります。そして介護サービスの向上にもつながっていく効果が期待できると私は考えます。

[参考記事]
「入浴拒否の元内科医の認知症入居者の対応には白衣を使用」

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