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認知症(アルツハイマー型認知症など)の薬についての解説

 

 認知症は脳の器質的な変化なので、基本的には治らない病気です。「基本的に」と書いたのは認知症の中の脳血管性認知症のように、脳の病気が原因の場合にはそこを取り除けば部分的に症状が良くなるケースもあるからです。しかし、それでも全てが元の通りとはいきません。それ以外のアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は今のところ治すことができません。

 では、認知症の薬にはどの様な効果があるのかというと薬の服用によって症状を抑えるだけです。風邪薬でも飲めば症状が治まりますが、それで「治った」とは言えませんよね。風邪はウイルスが原因で起こりますが、このウイルスを殺す薬は今のところありません。風邪自体は治せないのです。

 ではそれぞれの認知症の薬について解説をしていきます。

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アルツハイマー型認知症

 アルツハイマー型認知症用の薬がいくつかあります。先ほども言ったようにアルツハイマー型認知症自体を治すための薬ではありませんが、進行を遅らせることは可能です(全ての患者に必ずしも有効な訳ではありません)。

●アリセプト
 アリセプトは認知症の治療薬として古くから使われている薬で、認知症の薬といえば「アリセプト」と言われるほどのシェアを誇ります。処方が許されている認知症はアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症です。

 添付文書にも書いてありますが、認知症自体を治す薬ではありません。「認知症の症状」を抑えると考えてください。

1. 本剤がアルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。

2. アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症以外の認知症性疾

 脳は情報のやり取りにより記憶などを行っているわけですが、それには神経伝達物質(アセチルコリン)が関わっています。認知症の人はこの神経伝達物質がどんどん減っていくわけですが、この減っていくことを防ぐ作用をしているのがアリセプトです。

 もちろん、薬ですから副作用はあります。食欲不振、嘔気、嘔吐などが多いですが、なかには暴力的になったり、逆にうつ症状が出てしまう場合もあります。

 添付文書には臨床試験の時に、アルツハイマー型認知症が軽いor中程度の人で10%ほどの人に副作用が認められています。アルツハイマー型認知症が重い人では45%の発現率です。つまり、症状が重い人では半数程度の人に副作用が現れることになります。また、レビー小体型認知症の人では副作用が出る率が50%近いです。

●レミニール
 アリセプトと同じように、アルツハイマー型認知症の人に使われます。作用もアリセプトと同じで神経伝達物質の減少を防ぐ働きを持つ薬です。レミニールの添付文書に書いてある通り、認知症自体を治すことはできません。

本剤がアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。

 副作用も当然あり、アリセプトと同じく悪心(吐き気)、食欲減退、嘔吐の症状が出やすいです。臨床時のデータではアリセプトよりも副作用の発現率が高いです(軽度と中程度の人では約60%)。ですので、使用の際にはある程度の副作用は覚悟したうえで飲むべきでしょう。

●リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ
 リバスタッチパッチもイクセロンパッチも、上記でお話した薬と同じメカニズムを持つ薬です。つまりアルツハイマー型認知症の人に使われます。大きな違いといえば、飲み薬ではなく貼り薬という点です。

 副作用の発現率はアリセプトやレミニールよりも高く、臨床試験では約8割の人に出ています。貼り薬ですので、かゆみや発赤などの皮膚症状が現れる可能性が高いです。その他にも吐き気などの副作用も出る可能性があります。

国内臨床試験において安全性解析の対象となった1, 073例 中846例(78. 8%)に副作用(臨床検査値の異常を含む) が 認 め ら れ た。
主 な 副 作 用 は、適用部位紅斑404例 (37. 7%)、適用部位1痒感393例(36. 6%)、接触性皮膚炎273例(25. 4%)、適用部位浮腫119例(11. 1%)、嘔吐 84例(7. 8%)、悪心82例(7. 6%)、食欲減退56例(5. 2%) 及び適用部位皮膚剥脱52例(4. 8%)であった。(用法・ 用量一変承認時)

リバスタッチパッチの添付文書より引用

●メマリー
 メマリーはアリセプトやレミニール、リバスタッチパッチなどとは違ったメカニズムを持つ薬です。 グルタミン酸という神経伝達物質が過剰に分泌されることが原因で神経細胞が死んでしまうのを防ぐ作用があります。グルタミン酸はNMDA受容体にくっ付くことで情報が伝達されるのですが、この結合を邪魔するのがメマリーです。これによりグルタミン酸の分泌量が通常レベルに抑えられるということです。メマリーは、アリセプトなどの薬と併用して処方されることもあります。

 副作用はめまいや便秘、体重減少などが多く見られます。稀に幻覚や徘徊などが見られる場合もあるようですので、服用している場合は注意して観察したほうがようでしょう。メマリーは他の認知症の薬と比べて副作用が出る率は低めです(臨床試験の時)。

脳血管性認知症

 脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血の後遺症として現れるものです。ですから、脳血管性認知症を悪化させないためには脳卒中を再発させないことがとても重要になってきます。

 そのためには、高血圧や動脈硬化の治療が一番に考えられます。降圧剤(アムロジン、ノルバスクなど)や抗凝固薬(ワーファリンなど)、抗血小板薬(バイアスピリンなど)がよく使われる薬ですが、様々なタイプの薬があり患者の症状や状態に合わせて処方されます。

 また、脳卒中の後遺症である意欲の低下などを改善するために、脳代謝改善薬(サアミオンなど)や抗精神薬(グラマリールなど)が使われる場合もあります。

前頭側頭型認知症

 前頭側頭型認知症とは50代の若い方にも起こる認知症ですが、進行がゆっくりであると言われています。前頭側頭型認知症は記憶障害よりも、行動面での症状が多いです。例えば感情がうまくコントロールできなくなり欲求を抑えることが困難になりったり、万引きなどの反社会的な行動が目立つようになります。

 前頭側頭型認知症は、治療薬がありません。行動面を抑えるために抗精神薬などが使われる場合もありますが、根本的な治療には至らないため、周りの理解や適切なケアがとても重要になります。

 以上、認知症には様々な薬がありますが、認知症の種類や症状によって処方される薬は違います。薬を使う際は、医師と話し合って患者本人に合う薬を見極めることがとても大切であると思います。

[参考記事]
「認知症の周辺症状はどのような症状なのか」

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