広告

Read Article

ろう便のある認知症の人への排泄介助の対応事例

 

 認知症高齢者の中には、ろう便と呼ばれる便を触り、洋服や顔壁になすりつける行為を繰り返す方がいます。今回は、ろう便についてDさんの事例を通して考えてみます。

広告

Dさんの人物像と日常生活

 Dさんは83歳になる女性で、1年前まで息子さん夫婦と生活されていましたが、お嫁さんの介護疲れをきっかけにグループホームへ入居となりました。

 性格は明るく、やさしい面があり、人に何でもしてあげたい方です。職員が間に入らないと、自分のパンツを男性入居者さんにあげたり、便のついたトイレットペーパーを他の入居者様にあげようとされます。体は元気で自力歩行でき、食事も自力で召し上がる事ができます。

 そんなDさんは要介護3です。便の排泄処理が自力困難です。排泄時トイレットペーパーをたくさん取りポケットや服の中にしまいます。そして便処理はほんのわずかなトイレットペーパーを使い、指で掻きむしるように肛門の中にご自身で入れます。その手であらゆる所を触るため、服や顔・壁等が便だらけになります。

 トイレ後、石鹸を用意し、声をかけますが、「はいよー」と言って、石鹸をつけますが、便のついている手の指先をほとんどお湯で流さず、便や石鹸が手についたまま終えようとします。

 入居者さんとのトラブルもあります。Dさんがトイレに入った後に他の入居者さんがトイレに入ると「汚れてる!」と怒る方がいます。Dさん本人は「なんも汚れてないよ!」と言い返すため、トラブルになります。

Dさんの排泄に関しての対応

 Dさんは、グループホーム入居時、黒いタイツを履いていました。ご家族様に確認すると、だいぶ前から本人が好んで履いているというとの事でした。

 トイレ内で見守りさせて頂くと、毎回脱ぎずらそうにタイツを下げていました。Dさんに伺うと「寒いから」という返答が返ってきました。夏でもDさんは、タイツを履きます。そして、汗をかくせいで皮膚荒れもみられました。黒タイツで便の汚れが見えにくく、職員が行為介助しにくい事もありました。

 Dさんにとっての黒タイツが本人の趣味であるならばできる限り継続支援が必要だと思いますが、本人のいうように「寒いから」という事であれば、代用品を試したらどうかと会議で意見がでました。

 それで、ご家族様との外泊の時に黒タイツの代わりにももひきを提案して頂くようにお願いしました。その上で黒タイツに執着するようであれば、あきらめようという事でしたが、すんなり、ももひきに代えて下さいました。これにより、黒タイツより自力で脱ぎやすく、便汚染があった時もわかりやすく行為介助しやすくなりました。

 ただ、問題がすべて解決した訳ではないです。夜間帯等、職員が1人しかいない時に、必ずしも行為介助できるとは限りません。今でも、便で洋服や顔、そして壁と汚れてしまう事があります。

現在の対応

 Dさんは暇になってしまうと、すぐトイレに行ってしまい、ろう便してしまいます。

 現在、Dさんの性格を生かしながら、モップがけや手すり拭き等、出来る限り職員と一緒に楽しくお手伝いして頂いてます。

 トイレ後には、爪みがきを使ったり、体が便で汚れてしまった時には、入浴して頂くよう支援させて頂いてます。

感想

 常に100%解決する方法は今の僕たちには見つかりません。ただ、それでも、100%に近づくように考え実行する事はできます。

 これからも、Dさんの衛生管理をさせて頂きながら、当たり前の生活ができるように支援させて頂きたいと思っております。

[参考記事]
「認知症の周辺症状である異食行為により便を食べることもある」

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a comment

*
*
* (公開されません)

Return Top