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お金に対する執着が激しい認知症入所者に対する対応。銀行に電話をする

 

 有料老人ホームの入所者であるYさん(90歳女性)はご家族との折り合いがあまり良くなく、娘様が唯一面会へ来てくれる身内でした。

 Y様の特徴は
〇認知症があるが軽度
〇性格が頑固で自己中心的
〇物盗られ妄想もある
〇老人扱いをされるのを嫌う
〇こちらからの声かけや介助に対して拒否する傾向がある。こちらからの声かけが気に触ると声をあげて拒否をします。時には激しい不穏に繋がるため、より一層声かけや介助を慎重にしなければなりません。

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お金に対する執着

  Y様はお金に対して激しい執着があり、以前使っていた通帳を大事に肌身離さず持っています。また、常にその通帳を眺めています。通帳がないと不安になるので使い古しの通帳を持たせているのです。今現在Yさんのお金の管理をしているのは娘様です。

 Yさんが持っている通帳は既に使い終わった通帳ですが、認知症によりそれを理解できていません。ですので、お金が引き出された記帳を見ては、「何で引き出されているのか」「銀行に電話をする」「娘に確認をする」と不穏状態になります。Yさんは歩行にふらつきがあり、転倒のリスクがいつもあるのですが、不穏状態になるとさらに立ち上がりが酷くなり、転ぶ危険がありました。

 また、「銀行に電話をする!」と言い出せば、銀行に実際に自分で電話をするまで不穏状態が続きます。 その為Kさんの不穏が治まるまで職員がYさんにつきっきりになってしまうのです。そうすると、他の入所者への対応へ影響も出てくるため、職員はYさんと一緒に銀行へ電話をすることにしたのです。

お金の執着に対する対応

 職員はYさんと一緒に施設内にある公衆電話に向かう時に、1枚のメモを取り出しYさんに渡します。メモには、「○○銀行 ○○支店 担当○○ 電話番号039393…」と書いてあります。その電話へYさんが電話をするのですが、電話口では「なぜお金が引き出されているのか」を一生懸命質問するYさん。そして電話の向こうの銀行員から説明を受けるのですが、そうするとさっきまで険しい表情だったYさんの顔が、みるみる一気に明るくなり「そうだったんですね!分かりました!ありがとう。」と電話を切るYさん。

 電話の向こうの銀行員は、この施設の事務員の女性。あのメモ用紙に書いてある電話番号は有料老人ホームの電話番号で、Yさんがこうして不穏になる度に事務の女性に銀行員になりきってもらうのです。職員は隙を見て事務の女性に今からYさんから電話がかかってくること、銀行員になりきって欲しいこと、を伝えておきます。

 電話が終わるとKさんは落ち着きを取り戻し、笑顔が見られるようになりました。

 事務の方には少々手間をとらせてしまいますが、Yさんが落ち着きを取り戻すためには、介護の職員だけでは対応できないこともあります。なので、事務の職員にお願いしその本人の言う「銀行員」になりきってもらうのです。

まとめ

  認知症の人に対する対応は一概にこれが正しいという答えはないですが、その人の性格に合わせて対応もしっかり行い、考えなければいけません。声かけだけで落ち着きを取り戻すのが1番良いのだが、実際に声かけだけでは落ち着かない場合は多々あります。

 Yさんの場合は、自分で実際に電話をして確かめるまで不穏状態が続くので、「今日じゃなく明日かけてみましょう。」や「私が代わりに電話をしておきますから」という声かけではKさんは納得しないのです。それどころか更に不穏が激しくなる可能性もあるのです。その為実際に自分で電話をかけてもらい、納得するまで銀行員と話をしてもらうことがYさんの対応では正解なのです。声かけだけで落ち着かそうとするのではなく、実際に本人がやりたいようにしてもらい、それを見守るのも大事である。

[参考記事]
「認知症の人のお金への執着。700万円を老人ホームの自室に保管」

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