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認知症による転倒を防ぐための対応には行動パターンの把握が大事

 

 認知症のAさん(92歳女性)は自宅で転倒され右足を骨折されました。年齢的にも手術は難しいだろうとの事で、保存療法となりました。入院中は骨折したことを理解できないAさんは何度もベッドからトイレへ歩いて行こうとされる為、退院後は自宅での独居生活は難しいだろうとの事で、介護付き有料老人ホームへ入居となりました。

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認知症による痛みに対しての状況判断

 認知症を発症している高齢者の方は、痛みに鈍感になっている場合があります。骨折しているのにも関わらず歩行される方や、歩行を試みて転倒してしまい動く事が出来なくなっている所を発見するケースも少なくありません。

 Aさんの場合に関しても、自室で歩行を試みたり、フロアなどで他の入居者と過ごしている時に立ち上がり行為が見られたりと目が離せない状況が続き、時には立とうとするAさんに声をかけたスタッフに噛みつこうとすることもありました。

 Aさんにすれば、骨折した記憶がありません。その為歩こうとしているのに何度も止められたとしたら、頭に来ることもあるでしょう。ご本人は認知症による記憶障害により自覚していないのですから。

認知症による記憶障害

 記憶がない=記憶障害となります。自分が行った行動や過去の出来事を記憶できないのは認知症の中核症状の一つです。

 記憶障害には大きく分けて「短期記憶障害」と「長期記憶障害」がありますが、多くは短期記憶障害から始まります。昔の事はよく覚えているのに、ここ数年の記憶があいまいになる・同じ話を繰り返しされる事が多くなった等が特徴です。

 認知症でなくても、高齢者になれば物忘れが見られるようになります。認知症とはまた違いますが、こういったちょっとした記憶があいまいになり、徐々に脳の萎縮などが進行していくと、認知症になってしまいます。

 現在は認知症そのものを治療する薬は開発されていません。症状に対して働きかけることしかできません。また、「こうすれば認知症にならない」と言った方法もありません。しかし日々の脳トレーニングや食生活、運動、対人交流は脳の状態を良好に保つと言われています。色々な地域のコミュニティや、介護保険のサービスなどを積極的に利用して、自身で予防に努める事が大切です。

転倒防止の為の改善策は?

 では、有料老人ホームに入居しているAさんの転倒を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。

 介護スタッフの職員は、記憶障害そのものを改善させることは難しいことから「転倒させない」対策について検討しました。ただこれが「転倒されたら困る」「歩けないのに勝手に移動されては困る」等、スタッフ中心の考え方に繋がると、転倒させない→動かさない→自分で動けないようにすると言った悪循環につながる恐れもあります。自分で動けないように抑制する事は身体拘束にも繋がりますし、本人の尊厳を無視する行動となります。

 ですので、転倒させない→どうしたら歩こうとしている事に気付けるのか→どういった時に歩こうとされるのか→行動・状況のデータを取るという考えで、行動パターンの把握に努めるところから始めました。まず、どういう時に行動しようとされるのかを把握しました。

 その結果、「昔からの習慣で、午後になると散歩に行こうとしている。」「排せつの時間を確認してみると、2時間おきにはトイレに行こうとされていた。」Aさんの場合にはこういった行動パターンを把握する事が出来ました。行動パターンが把握できれば、その時間より少し早く介助に入る準備をする事で転倒のリスクは減少します。Aさんも行動を止められる事が減ったので立腹する事も減少していきました。

 認知症の方でも、日々の行動には「目的を持った行動」をすることは多く見られます。相手の立場になりながら、理解しようと考えながら対応していく事が大切です。また、今では便利な介護用品が多く存在します。転倒リスクを軽減させるアイテムを調べる事、福祉用具専門相談員等に相談する事も必要な事でしょう。靴の種類を変えたり、手すりを付けたり、クッション性のある下着を履いてもらったりとできることはたくさんあります。

[参考記事]
「転倒を繰り返す認知症の人への対応事例」

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