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認知症による被害妄想に対する対応。ヘルパーが掃除をしてくれない

 

 認知症のYさん(80代女性)は転倒により腰を悪くされ、老人保健施設で生活されていた利用者さんです。入所されて2ヶ月ほどで体調が回復し、独居のご自宅へ戻られましたが再度体調が悪化。1ヶ月の入院生活のなか、ご自身も独居を続けていくのは難しいと判断。医療ソーシャルワーカーに相談し、退院後はサービス付き高齢者向け住宅に移られました。

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ヘルパーが掃除をしてくれないという被害妄想

 サービス付き高齢者向け住宅ではヘルパーを利用し、週に二日居室とポータブルトイレの掃除・洗濯、ゴミ捨てを頼んでいたYさん。

 ある日、いつもと同じようにヘルパーが挨拶をすると「調子が悪いから構わないで」とベッドに横になられてしまい、ヘルパーは「調子が悪いのにすみません」と謝りながら掃除を始めました。ヘルパーが掃除を始めてしばらくしたところ、Yさんは突然「今は掃除をしなくていいですから」と怒ってしまいました。

 ヘルパーは「体調が悪いなか申し訳ありませんでした」と伝え、丁度Yさんの居室付近を巡回していたサービス付き高齢者向け住宅の相談員と話をし、止むを得ず退室しました。

 後日、サービス付き高齢者向け住宅の相談員からヘルパーの事業所へ「あの後、Yさんが「ヘルパーが掃除をしてくれない」「もっと色んなところを掃除してほしい」と声を荒げて興奮された。今後ヘルパーのサービスの際また何かあったら報告してほしい」と連絡がありました。Yさんに被害妄想が現れていたのです。

 その後もYさんは「物を盗られるから」とご自身の車椅子の肘掛けやシートにお部屋の鍵や本などを置いたり、今まさに洗濯をしているヘルパーに「私の服も洗濯してよ」と怒鳴り、「今洗濯物を回していますよ」というヘルパーの言葉にも反応されないといった状態が続きました。

Yさんの被害妄想に対する対応

 そんな状況が続く中、Yさんに対するより良い支援について、ヘルパー同士で話し合いの場を設けます。

 入所されたばかりの頃のYさんは、物忘れをはじめ、認知機能の低下といった認知症の中核症状は見られていたものの、周辺症状はほとんど見られておらず、サービス開始当初はヘルパーも良好な関係を築けていたと感じていました。

 しかし、サービス開始から一ヶ月ほどしたある日、Yさんは悪くした腰をかばうように腕に力を込めていたところ、利き腕の右腕を痛めてしまいます。

 話し合いは、こうした度重なる身体の不調や居住環境の変化から次第に認知症が進行していき、不安や被害妄想といった心理面での周辺症状が現れたのではないかという結論に至りました。

対応策と中核症状の進行

 周辺症状として現れた不安や被害妄想を取り除くのは困難だと判断し、Yさんの不安や被害妄想を出来るだけ抑えられるよう対応策を講じました。

 「ヘルパーが掃除をしてくれない」「洗濯物もしてよ」といった件に対して、ヘルパー用のカレンダーをプリントし、サービス付き高齢者向け住宅の相談員と相談してYさんのお部屋の壁掛け時計の隣に貼りました。カレンダーは可愛い目の引くものにし、Yさんにも了承を得ることが出来ました。そのカレンダーにはヘルパーの訪問日時が記入されていて、隣の時計と確認が出来るようになっています。

 カレンダーとは別にサービスチェック表を作り、Yさんに掃除や洗濯の確認を得、終わった際にはチェックをつけながらサービスをしていきます。これらは初めの頃は「なんでわざわざチェックしてるの」という意見がYさんからありましたが、「掃除をしてくれない」といったことは次第になくなっていきました。

 一方で、「物を盗られるから」といった件に対しては、Yさんはヘルパーが物を盗ったと言われることはなかったため、車椅子にある鍵等については見守りを続けていくことになりました。

 サービスも再び安定してきた中、Yさんは次第に中核症状が進行していき、不安や被害妄想といった周辺症状は潜んでいきました。ほどなくしてYさんは室内で転倒、入院されて退院後は施設に入所することになりましたとケアマネからヘルパーに電話があり、サービスも終了になりました。

 最後に

 たとえそれが認知症からくるものであったとしても、暴言等を浴びせられるヘルパー自身も辛いことかと思います。この記事が、少しでも対応策を講じるお手伝いになれば幸いです。

[参考記事]
「認知症による物盗られ妄想(被害妄想)に対する対応とは」

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