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認知症の治療で使われる非薬物療法について

 

 現在の医学で、認知症は治せません。治せないですが、症状を遅らせたり、抑えたりするために、アリセプトやメマリーといった薬を使った「薬物療法」と運動療法や音楽療法などの薬を使用しない「非薬物療法」を行います。つまり、一時的な効果を狙う対症療法です。

 今回は非薬物療法について説明しますが、認知症の非薬物療法は多種多様で、効果もさまざまです。各種非薬物療法の特徴を理解し、その方に合った療法を選んでいただくことが効果的です。

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非薬物療法①運動療法

 適度な運動は脳に良い影響が有ります。例えば、運動によって脳の血流量が増加すると脳へ酸素や栄養がより多く送られます。それ以外にも脳神経の変性(病的に変化する)を予防することができます。

 具体的には、1日30分のウォーキングなどの有酸素運動を週3日程度実施するなどが良いでしょう。

非薬物療法②食事療法

 認知症の中でも脳神経の変性により発症するアルツハイマー型認知症、脳梗塞などが原因で起こる脳血管性認知症は、生活習慣病によって発症の危険性が上昇すると言われています。

 緑黄色野菜に含まれるビタミンEなどの抗酸化成分、魚に含まれるDHA、お茶や赤ワインに含まれるタンニンなどのポリフェノールは、脳神経の変性を予防するなどの効果が期待できます。

非薬物療法③現実見当識訓練

 認知症の中核症状の1つである見当識障害に対する治療としてRO(リアリティ・オリエンテーション)が行われています。

 見当識障害とは、自分が今いる場所やトイレのある場所が分からなかったり、今の時間(朝なのか夕方なのかなど)、季節などの、場所や時間がわからなくなる症状です。

 ROの具体的な方法を説明します。例えば今日の日付が5月5日として、認知症の方に「今日は何日ですか」と聞いたとしましょう。「今日は5月5日です」と答えが返ってきた場合は、「そうですね、今日は5月5日ですね」と日付を含めて返答します。答えが返ってこなかったり間違っていた場合は、「こどもの日ですよ」などヒントを伝えて、答えを導いていきます。

 また、日常の関わりの中で時間や具体的な場所を明示していくことも重要です。見当識障害を伴う方は、昼間を夜と思っていたり、その逆もあります。その場合、「まだ昼間だから寝る時間じゃないですよ」と伝えるよりも「今は15時だから寝る時間ではないですよ」と具体的な時間を入れて伝える方が効果的です。

非薬物療法④学習療法

 記憶には即時記憶・近時記憶・遠隔記憶があります。即時記憶とは、短ければ秒程度、近時記憶は1時間くらいの時間単位から最大で数カ月までの記憶、遠隔記憶は年単位の記憶と言われています。

 学習療法は、記憶の中でも即時記憶に働きかけ、脳の活性化が期待できます。即時記憶とは、前頭葉で保管される、瞬間的な記憶になります。

 具体的な方法しては、小学校の低学年から中学年程度で習う、簡単な漢字の読み書きや計算問題を行っていきます。これにより、脳の前頭葉の血流が上昇することが確認されています。

非薬物療法⑤レクリエーション療法

 レクリエーション療法の中でも、将棋や麻雀などの戦略性の高いものは、近時記憶に働きかけ、脳の活性化が期待できます。近時記憶は、脳の海馬で保管される短期から長期の記憶になります。

 具体的には、将棋などのボードゲームや神経衰弱などトランプゲーム、数独などが良いでしょう。注意点としては、楽しいと思えるものを選ぶことと、適度な難しさで行うことです。海馬はストレスに弱い器管であるため、楽しくないことや難しすぎることは、過度なストレスになってしまい逆効果になることもあります。

非薬物療法⑥回想療法

 回想療法は、記憶の中でも昔の記憶(遠隔記憶)に働きかけ、脳の活性化をはかる治療法です。遠隔記憶は、脳の側頭葉で保管される長期記憶となります。

 具体的な方法は、認知症の人に昔話をしてもらったり、昔の写真や物を見せて、それについてお話をしてもらうことです。また話の内容によっては、若い人に昔のことを教えてあげているという自信や優越感を得ることもでき、精神的な安定にも効果が期待できます。

まとめ

 認知症に対する非薬物療法においては、まだまだ多くの種類がありますが、重要な事は、その方の出来る範囲をしっかりと把握することになります。

 出来ない、好きではないことを押し付けても、ストレスを感じてしまうこともあります。その場合は、かえって悪い効果を与えてしまい、症状の悪化を招く危険も有ります。

 各種治療法を実行する前には、対象者の意向や能力を把握することが重要になります。

[参考記事]
「認知症(アルツハイマー型認知症など)の薬についての解説」

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