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認知症の中核症状とはどのような症状なのか

 

 認知症は進行性の障害であることはご存知でしょうか。中には適切な治療によって改善するものもありますが、認知症は現在では治すことのできない障害です。認知症の症状を調べているとよく見かける「中核症状」という言葉があります。認知症とは脳の器質的な変化から起こりますが、その変化により起こりやすい症状が中核症状です。認知症が進行すると、記憶力の低下が顕著に見られるようになりますが、この他にも以下のような認知機能の低下は起こっています。

 これらの症状をまとめて「中核症状」と呼んでいます。

中核症状には

・記憶障害

・実行機能障害

・失行

・失認

・失語

・見当識障害

があります。これらはどのような症状が見られるのかを、詳しく説明していこうと思います。

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中核症状①記憶障害

 認知症と聞くとまず「忘れっぽい」というイメージを持つと思います。これがまさに記憶障害なのです。昔のこと(長期記憶)は比較的保持していることが多いですが、直近の出来事(短期記憶)は記憶を保持することが困難になります。症状が進行すると長期記憶も衰えていく可能性があります。短期記憶と長期記憶では、記憶を保持する場所に違いがあるため、メカニズムにも違いがあるのです。

〈短期記憶…海馬〉
 短期記憶とは、数十秒間程度なら覚えていることができる記憶のことです。覚えようという気持ちがない場合は、数十秒後には忘れてしまうのです。電話を受けた時、会社名や氏名、いくつかの要件を伝えられても、メモをしないと完璧には覚えられませんよね。

 では人間の短期記憶はどれくらいの記憶を保持できるのでしょうか。15個くらいのことなら覚えられるかな?と思うかもしれませんが、短期記憶の容量は残念ながら7±2程度のごく僅かなものだと言われています。

〈長期記憶…側頭葉〉
 長期記憶は短期記憶よりも容量が大きく、また何年も何十年も覚えていることができる記憶のことです。母親は子供の顔や名前などをずっと覚えていますよね。これが長期記憶です。短期記憶の中で特に覚えておきたいことやとても印象の強かった記憶は、長期記憶へと移ります。

 では、長期記憶はどのくらいの容量があるのでしょうか。100万個…1兆個…自分の頭の中にはどれくらいの記憶が蓄積されているのでしょうか。短期記憶は少ないと5個程度のことしか覚えていることが出来ませんが、長期記憶はなんと1000兆個分もの容量があると言われています。

中核症状②実行機能障害

 物事を実行するとき、みなさんはどのようなステップを踏んで実行しますか?意識はしていないかもしれませんが、

1、 計画を立てる

2、 計画を実行する

3、 順序良く行う

といったように進めていくと思いますが、実行機能障害がみられる場合は上記の行動が困難になります。

 例えば、味噌汁を作る場合はまず鍋で出汁を作り、野菜を切ったり味噌を入れたりしますよね。味噌汁を作ることは難しい作業ではないはずですが、この単純な作業が出来なくなるのが実行機能障害です。次に何をすればいいのかが分からなくなってしまうため、味噌汁を作ることが出来なくなってしまうのです。

 今までは普通に行なっていた、とても単純な作業が出来なくなってしまうため、生活に支障をきたすことが多いのが特徴です。初期のうちは時間がかかってもなんとかやりきることができますが、認知症の症状が進むにつれて出来ないことが増えるようになります。

中核症状③失行

 失行とは、体の機能には何も問題がないのにもかかわらず、今までは毎日普通に行っていた行動が出来なくなることを言います。脳の気質的病変が原因で、運動麻痺や知覚麻痺がないのに、的確な行動が出来なくなるのです。

〈着衣失行〉
 衣服の着脱動作が出来なくなることを言います。セーターの着方が分からずにズボンのように履いてしまうなどの行動が見られます。認知症の人には着衣失行がよく見られます。

〈観念失行〉
 箸を使って食べるなどの日常的な単純な動作が出来なくなることを言います。箸の使い方が分からず、箸を1本のみで使おうとするなどの行動が見られます。

〈肢節運動失行〉
 手や足、体幹などをスムーズに動かすことが困難になります。今までは長けていた動きなども出来なくなることがあります。歩きだしが拙劣になるなどの様子も見られます。

中核症状④失認

 失認は、後頭葉や側頭葉などの損傷が原因で起こります。視覚・嗅覚・触覚には何の問題もないのにも関わらず、物を認識できなくなることを言います。今までわかっていた人や物がわからなくなるなどの症状がみられます。

〈物体失認〉
 目の前にある物が何であるのかが分からなくなります。例えば、ボールが転がってきてもそれがボールであることを理解できなくなるのです。物体失認では、見て分からない場合でも、触れば分かるということもあります。

〈相貌失認〉
 人の顔が覚えられなくなります。また、その人がどのような表情をしているのかを理解することが困難になるのです。何度もあったことのある人に「初めまして」と言ってしまい不愉快にさせてしまうなど、生活する上で大きな支障を来します。

 2013年には、かの有名なブラッドピッドが相貌失認に悩まされていることをカミングアウトしています。仕事で何度も顔を合わせている相手のことを覚えられない為に、失礼な奴だと思われ嫌われてしまったと告白しています。もちろん、彼は認知症ではないですが、頭を強くぶつけたなどの要因で相貌失認になることがあります。

〈聴覚失認〉
 聴覚失認とは、聴覚には問題がないのにも関わらず、もともと知っていた音などを聞いても何の音なのかを理解することができない症状のことを言います。みなさんは雨の音や電話の音を聞けば何の音なのかを瞬時に理解すると思いますが、聴覚失認の場合は聞こえてはいるけれども何の音なのか分からない…という状況になります。

 話し言葉に対する理解力は比較的保たれる為、会話には支障がでないことが多いようです。逆に、音は聞き取れても言葉が聞き取れない「言語性聴覚失認」というものもあります。

中核症状⑤失語

 失語とは、脳の損傷によって起こる障害で、口や唇・器官などに問題がないのにもかかわらず、言語や言語を理解・操作する機能に障害が現れる状態のことを言います。

 私たち人間は簡単に会話をしているように感じますが、会話をするにあたって

・耳で聞く

・聞いた声を音にする

・話を頭で考える

・口などの筋肉を動かす

・相手に話しかける

・単語を理解する

・文章を構成する

などの多くのことを無意識のうちに行っています。上記の中のどこかが欠けてしまう症状が失語なのです。話を聞いて頭で考えることができても、筋肉を動かして話すことができなければそれはさ失語症の症状になります。失語は大きく分けて2種類あり、損傷を受けた部位によって異なります。認知症も脳の変異が原因で起こるので、失語が起こるわけです。

〈ウェルニッケ失語〉
 感覚性失語とも呼ばれるウェルニッケ失語は、左脳のウェルニッケ野という部分が損傷を受けることによって引き起こります。流暢に話すことができるので一見障害があるようには思わないかもしれませんが、言語を理解することが困難なため、よく分からない言葉を話したりと会話にならないことが特徴です。

〈ブローカー失語〉
 運動性失語とも呼ばれるブローカー失語は、左脳前頭葉のブローカー野という部分が損傷を受けることで発症します。言葉はしっかりと理解できるのですが、言葉を発することに障害があるため上手く話をすることが出来なくなります。話したくても上手く言葉が出ず、ぎこちない話し方になるのが特徴です。

中核症状⑥見当識障害

 見当識障害とは「今が昼なのか、夜なのか」「今が夏なのか、冬なのか」「今どこに住んでいて、周りにいる人は誰なのか」など日常を送っていると自然と分かっている現状認識が障害を受けることです。

 見当識障害の例としては、夜だと分からずに起きている、自宅に住んでいるに「家に帰りたい」を言う、夏なのにヒーターをつけているなどのケースがあります。

 色々な中核症状についてお話ししましたが、これらの症状は認知症の患者さんのほとんどの方に出現する症状です。中核症状の他にも「BPSD」という言葉を聞いたことがある方もいるかと思いますが、BPSDは周辺症状(行動・心理症状)と言われ必ずしも出現するとは限りません。環境や心理状態によって変化するものがBPSDになります。BPSDは、中核症状に付随して引き起こる症状のことなのです。例えば徘徊、暴力、幻覚などがあります。

[参考記事]
「認知症の周辺症状ってどんな症状なの?」

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