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認知症の人が熱中症になりやすい原因とその対策について

 

 今年は本当に暑いですね。高齢者向け住宅に勤務する私は、この季節になると、入居者の方が熱中症にならないか、非常に心配になります。

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季節に合わないものを着るAさん

 暑い夏の真只中、事件は起こりました。Aさん(86歳女性アルツハイマー型認知症)が、夕食の最中に嘔吐し、その場にフラフラと崩れ落ちるように倒れたのです。すぐに、呼び掛けには反応されましたが、念のために医療機関に搬送しました。熱中症でした。翌日には、体調はほぼ改善されましたが、ヒヤッとした出来事できた。

 Aさんは、入居当時は身なりはきちんとしていて綺麗にされていました。しかし、最近は、身だしなみが少しだらしなくなり、時々季節に合わないものを着ることがあり、心配していました。この前は、夏だというのにコートを着て散歩へ行こうとしたり、部屋のエアコンを暖房に設定されていました。職員もこれらが熱中症の原因になるとして注意して見守っていたつもりなのですが、事件は起きてしまいました。

認知症の人が熱中症になりやすい原因

原因①認知症の入居者の多くは、持病があり、薬をたくさん服用されています。特に利尿薬を服用されている場合には脱水を起こしやすくなります。糖尿病の新薬も脱水作用があるとして厚生労働省が注意喚起をした例があります。

原因②高齢者は発汗機能(温度調整機能)の低下で夏の暑い時でも熱が体内から逃げにくくなります。

原因③認知症の場合には認知力の低下により、気温の変化やのどの渇きを感じにくくなり、適切な水分摂取ができなくなることがあります。

原因④認知症の見当識障害により、夏でも冬だと思い込んでいる場合があります。見当識障害とは「今何時で、何月で、何年なのか」「今の季節」「いま居る場所はどこか」「周りの人は誰なのか」など今の現状認識です。訪問介護をしているときに夏でもストーブをつけていた認知症の人もいました。

 こうして、日常生活のなかで、本人も周囲も気づかないうちに熱中症が進行してしまう、上記のような例が多くみられるのです。

認知症の人のための熱中症対策

対策①さりげなく、助言や援助をする
 見当識障害により厚着をしている場合には「夏だから薄着にしなさい」と命令するのではなく、さりげなく「蝉の声が聞こえるね。その恰好では、汗だくになるよ」と助言をするとよいでしょう。こちらが怒ったような口調で注意すると、ますます不安になり異常な行動を起こす場合もあります。また、冬服は本人の手の届かないところに片づけておくのもいいでしょう。

対策②通気性の高い衣服を着る
 Aさん(86歳女性アルツハイマー型認知症)は倒れた時に半袖を着ていましたが、なんとその服の下に、冬に着る保温性の高い厚い生地の下着を着ていました。それも体に熱がこもってしまった原因のひとつでしょう。

 衣服内の高温高湿な空気を外部に逃がすには衣服の素材も重要で、通気性のよい衣服を着ることが重要です。吸湿、吸水、速乾性の高い衣服を着用し、汗の蒸発を妨げないようにしましょう。

 また、入居者の方で多いのが、ポロシャツやブラウスの襟のボタンを上までキッチリとめられている方です。見た目に上品で、とても好ましい恰好なのですが、衣服開口部からの換気を妨げているため、熱中症を予防するためには好ましくないのです。一番上のボタンを開けるなどしてなるべく、襟元や袖口や裾などから、風が入りやすいようにしておくのがよいでしょう。

対策③いつもより多く水分を摂取する
 気づかないうちに脱水が進みやすいのが認知症の人の特徴です。排尿の回数が減ったとき、尿の量が少ないとき、尿の色が濃くなったときは脱水が始まったサインです。三度の食事以外でも、就寝前、起床後、入浴前後にコップ一杯の水分を補給する必要があります。のどの渇きを感じる前に水分補給を心掛けることが大切ですが、認知症の方は口渇感の感覚が衰えているので、定期的に水分を摂取する必要があるのです。

対策④デジタル温度計、湿度計 
 認知症の人は気温や温度を理解できないかもしれませんが、部屋の目立つ場所にデジタル温度計を置くことで、職員や家族がこまめにチェックできますし、本人へも注意喚起するときに役立ちます。

 また、テレビやインターネットで気象情報を収集することも大事です。気象情報を認知症の人へ提供し、頻繁に居室の温度の確認、水分補給の励行、健康状態をサポートします。部屋によって日射の強い居室があるので、カーテンをしめるなどして室温の上昇を防ぐことが大切です。

終わりに

 以上のように、熱中症の予防の基本は体温上昇の抑制と脱水予防にあるといえるでしょう。認知症の人は、熱中症による体調の異変にも気づくのが遅い傾向があるため、周囲の発見が遅いと重篤化しやすい傾向にあります。そのため早めの対策が重要になってくるのです。

 気象学会の調査によると高齢者の熱中症発生場所は、自宅が一番多く、睡眠中に発症することも多いそうです。だからこそ、部屋の室温、水分の摂取状況は頻繁に確認しなければなりません。熱中症は、気づかずにそのままにしておくと命にかかわります。日常生活で、しっかり予防し、万が一熱中症でなった場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

[参考記事]
「一人暮らしの脳血管性認知症の男性が老人施設へ入所するまで」

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