前頭側頭型認知症の脳は、前頭葉または側頭葉に障害が見られます。アルツハイマー型認知症と同様に、脳の神経細胞に特殊なタンパク質(リン酸化タウなど)が蓄積することで前頭側頭型認知症を発症すると言われていますが、詳しい原因は未だ分かっていません。
前頭側頭型認知症の症状としては、
・社会ルールの無視
・服装などに関心がない
・人格障害
・同じ行動を繰り返す
・自発性の低下
・模倣行為
・言葉が上手く話せない
・食に対する執着
などが挙げられます。
前頭側頭型認知症は、理性などをコントロールする前頭葉の機能に障害が起きていることで「社会性の欠如」「人格障害」「行動障害」といった症状が目立ちます。社会のルールを守らなかったり、周りの状況を見ずに自分の思い通りの行動をするなどの行動障害が現れます。前頭側頭型認知症もアルツハイマー型認知症のように記憶障害が現れますが、その症状は少し進行してからです。
詳しく症状を見ていきましょう。
症状①社会ルールの無視
お店の商品をお金を払わないで持ってきてしまうなどの行動を取ることがあります。自分の思うがままに行動をしますが、反省や罪悪感を感じることはありません。我を通すことに意識が強くなり抑制が効かないため、周囲に行動を咎められると暴力に発展することもあります。
症状②服装などに関心がない
不潔を気にしなくなり、身だしなみがどんな状態でも平気になります。自己という感覚が弱くなり、自分について関心がない状態です。
症状③人格障害
前頭側頭型認知症を発症することによって、人格が大きく変化します。怒りっぽくなったり、他人を馬鹿にする態度をとるなどの行動が見られます。他の認知症でも人格障害が現れることは珍しくありませんが、前頭側頭型認知症はその傾向が強いと言われます。
芸能人の栗田貫一さんも前頭側頭型認知症ですが、奥さんを怒鳴りつけることがあるそうです(テレビで話していました)。
症状④同じ行動を繰り返す
「天候に関係なく、毎日決まった順路を散歩する」「拍手や髪を触るなどの単純な行動を繰り返す」「毎日同じ衣服を身に着ける」「決まった時間に同じ行動を行う」などの常同行動が高い頻度で現れます。
このような特徴から、もし、徘徊して見当たらなくなっても、いつも歩いている道を探せばすぐに発見できる可能性があります。
症状⑤自発性の低下
自発性の低下は前頭側頭型認知症の初期から見られる症状です。抑うつ状態とは異なります。抑うつ状態の場合は気分の低下や不安、罪悪感などといった感情が見られますがそれらとは異なります。
声をかけないと何時間でも何もせずに同じ場所に座っていたり、質問をしても考えずに「わからない」と返答するなどの自発性の低下が見られます。そのため治療や診察に非協力的な姿勢が見られます。自発性が低下するため、引きこもったり何もしない状態が長期に渡り続くことがあります。病識がないため、葛藤や罪悪感もなく改善が困難です。
症状⑥模倣行為
相手と同じ行動・言動を行います。周りの人が立ち上がって歩きだしたら、自分も立ち上がるなどの行動が見られます。その他にもオウム返しで人の言葉を真似る傾向があります。例えば鉛筆を見せて、「これは鉛筆です」と伝えると「これは鉛筆です」とオウム返しをします。
症状⑦言葉が上手く話せない
語彙の理解力が低下していることもあり、会話がスムーズに進みません。会話とは相手の話を理解しないと成り立ちませんので、言葉で理解をさせようと思っても難しい面があります。
症状⑧食に対する執着
同じものを食べ続けるなどの食に対する執着が見られます。先ほど説明した「社会ルールの無視」と相まって、店頭に並んでいるものをその場で食べてしまったり、他人の畑から作物を盗むなどの行動に至るケースもあります。際限なく食べる傾向もあり、夜中に冷蔵庫を漁ってしまったりすることもあります。
アルツハイマー型認知症の場合、記憶力は低下しても人格が比較的保たれていますが、前頭側頭型認知症の場合は万引きなどの犯罪を行う場合もあり注意が必要です。
また、他の認知症と比べ、50歳くらいの若年で発症します。他の認知症と一緒で、治すための治療法はありません。言葉の理解ができない面もありますので、対応も難しいものとなっています。
[参考記事]
「アルツハイマー型認知症の症状と特徴について」