地域包括支援センターとは、現在の福祉政策において要とも言える「地域包括ケアシステム」の中核を担うべく生まれた施設であり、平成18年の介護保険法改正と共に誕生しました。
設置は原則市町村に一か所ずつとされ、地域に住まう住民の健康増進、介護予防、福祉の増進を目的として運営されています。現在、地域包括センターの数は約4300あります。
理由として、テレビやニュース、自治体等での啓発活動も含めて、盛んに超高齢化社会の問題点や、認知症の存在が取り上げられ、国民一人一人に知れ渡ったという事もあります。それ以上に実生活において、介護や医療、福祉等の問題が我が事として降りかかってきためです。
国は地域包括支援センターの設置を決めた段階で、現在の医療、介護、福祉の問題が確実に発生し、社会問題となる事は人口動態からも当然予測していたのですが、国民が自分自身の問題として実感し始めたのは本当につい最近の事なのです。
地域包括支援センターの運営の主体は市町村ですが、「直轄の所」と「委託している所」とに二分されます。やはり地域の全てを市町村職員で対応する事は困難であるため、委託の上運営を行っている所が多いのが現状となっています。「直轄の所」が3割、「委託している所」が7割です。委託先は社会福祉法人、社会福祉協議会、医療法人が主です。
その主たる業務は、地域住民からの医療、介護、福祉の相談対応となっています。この対応には、地域包括支援センター内の主任介護支援専門員、保健師、社会福祉士が行います。
この三職種の配置が決められているわけ
なぜこの三職種の配置が義務付けられているのでしょうか。闇雲にこの三職種の配置を国は義務付けているわけではなく、そこには超高齢化が進む日本の問題、認知症患者の増加、核家族化による家族力の低下、医療費や介護保険料の増大による財政問題、医療費の増大を抑えるため病院そのものの数が減っている事等、決して介護や高齢者だけの問題だけではなく、非常に複雑な背景が相互に関係しあっているためです。
特に介護が必要となる高齢者の方の多くには、病気等の医療的な問題、経済的な問題、家族や身寄りがいないがための権利擁護の問題、障害や虐待等、ここにも多種多様な課題が螺旋状に、絡み合っている事が多いためです。そのため、一見して一つの問題点だけが見えたとしても、紐解くことにより、それ以上の何かが顔を見せる事も決して珍しくありません。そのため様々な状況を予測し、かつ予想外の事態にも対応できるように、医療、介護、福祉の側面から包括的に対処できるようにこの三職種がそれぞれ配置されているのです。
もう一つこの三職種が配置されている大きな理由として、地域包括支援センターはワンストップサービスを基本としているためです。地域包括支援センターが設置される前までは、それぞれの行政においても窓口が違うため、複数の相談を同時にしたくとも行う事ができず、あるいはたらい回しにされてしまう事もままあり、相談希望者にとっても、対応者にとっても決して効率的なシステムではありませんでした。
現在ではあらゆる相談に、まず対応できる場所として地域包括支援センターがその役割を任されています。その上で、対応可能な範囲での相談であればそこで完結していきますが、行政の介入や、障害問題、より専門的な医療の介入が必要と判断された場合には、専門機関に繋ぐという役割も担っています。
地域包括支援センターの実務
続いて、先に述べた三職種の専門職含め、地域包括支援センターで働く職員は具体的にどのような実務を担っているのかを説明していきます。すべての職種に共通するのが利用者からの相談援助業務となっています。
多い日であれば1日3件~5件程度の介護相談を受ける事もあり、必要性であれば実際の訪問も行います。加えて介護保険申請手続きの対応も相談と同様に行っています。その他にも区役所や社会福祉協議会、自治体や老人会、関係機関各所等との連携連絡等も盛んに行われるため、それらにも参加し情報交換等を行っています。
更に職種毎に見ていくと、主任介護支援専門員は主にその地域にある居宅介護支援事業所の介護支援専門員への相談、助言にあたっています。とはいっても介護支援専門員個人に対して指導的立場で接するというわけではなく、主に「困難ケース」と呼ばれる解決が難しいケースに関して、一緒に考えていく、場合によっては地域包括支援センター内の別の専門職の力を借りながら力添えをしていけるように立ち振る舞いを行っています。
その他に、地域そのものに対して包括的かつ継続的なケアマネジメントを行う事も重要な役割となっています。通常介護支援専門員は利用者個人あるいはその家族等に支援を行いますが、主任介護支援専門員は更に広い視点でもって地域に対してケアマネジメントを施していく事となっています。
保健師は地域住民に対して介護予防を行う事が最も重要な役割をなっています。無論、先に述べたように介護支援専門員等に対して相談等を行っていきますが、最もウエイトを占めるのは地域を分析し、必要な介護予防指、あるいは介護予防教室を開催していく事にもなっています。
社会福祉士はやはり権利擁護時に対する対応が大きく、地域に対して権利擁護の浸透を図るべく、相談会や研修等も開催していきます。
地域包括支援センターが目指すところ
このように実際に相談援助を求めている地域住民に対する対応も行っていますが、将来介護や医療、福祉が必要になると予測される方へあらゆる側面より一時的ではなく継続的に支援を行っていく事で、地域の中でできる限り長く生活できるようにも取り組んでいます。
介護保険法が目指す自立支援はこの国の未来を考える上で最も重要なキーワードとなります。地域の中で自立した生活、在宅生活の限界を引き上げてくためには、画一的な対応だけでは困難であり、柔軟かつ複合的に対応できる機関の充実が求められています。地域包括支援センターの設立はそもそもそれを目的とはしていますが、今まさにその真価が問われようとしているのです。
[参考記事]
「ダメなケアマネージャーのタイプを5つ発表します」