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認知症による着衣失行の症状とは。冬なのに半袖を着るなど

 

 衣食住は、人が生きていくうえでとても大切なものです。認知症介護の現場では、事故やケガなど深刻な結果が起こりうる居住環境や食事に比べて、衣服のことは話題になることは少ないですが、「衣」に関してもいろいろと苦労もあり、工夫もなされているのです。

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着衣失行

 認知症の人は「着衣失行」という服をきちんと着ることができない症状が現れたり、TPOに応じた服の選択が困難になることがあります。さらには服を見ても、それを着るものだという認識ができない症状が現れることもあります。物を見ても、それが何だか分からない症状を「物体失認」といいます。着衣失行も物体失認も、認知症の中核症状ですので、認知症の人に現れやすい症状です。

 介護施設に勤めていると、着衣失行はよくみる症状であり、例えばシャツをズボンと勘違いして足に履いて出てきたり、「ポンチョ、履くよ」と言いながら、スカートを履いたりと想像を超える着こなしを見ることができます。

画像(ポンチョ)

 先日は利用者さんが二回りくらい大きなって部屋から出て来られました。Tシャツをなんと7枚も重ね着されていたのです。関取のような歩き方を見て、スタッフ一同だけではなく他の利用者さんも思わず大笑い。和やかな雰囲気につられたのか7枚Tシャツのご本にも大笑いされてました。これが受け狙いだったり、何かのギャグだったらいいのですが、れっきとした着衣失行という認知症の症状です。

 この暑い時期に7枚ものTシャツを着たままにするわけもいかず、早々に脱ぎでもらおうとしたのですが、これがもう脱がしにくいこと。着ぶくれした体は腕も上がらず、伸び切ったシャツはどうにも脱げず、まさに悪戦苦闘。スタッフ3人がかりで汗だくになりながら、Tシャツ一枚になってもらいました。一番上に着ていたシャツは完全に伸びきって、可愛いかったプリントされたキャラクターはとてもかわいそうな状態になっていました。

 次の章で着衣失行の対応について説明します。

衣替えはタイミングが大切

 私が働いている介護現場は自主自立が重視されています。ご本人の意思を尊重し、できることはできるだけ本人にやってもらうようにしています。手足の麻痺があって自分で更衣できない人以外は基本的に服の着脱は本人に任せているので、着衣失行が起きることもあります。ADL(日常生活動作)に問題がないのに、どうしても服を着れない場合には、あらかじめ衣類を用意してあげたり、着るのをサポートしてあげるのが適切な対応になります。

 更衣を本人に任せるにあたり、介護職が気を付けているのが「衣替え」のタイミングです。認知症が進んだ人は季節や気温に合わせた服を選択することが難しくなる傾向があります。そんな人はタンスの中にある、目についた服を着てしまうので、真冬に半袖だったり、真夏にジャンバーを着たりするのです。ただでさえ高齢者は体温を調整する機能が弱くなっているので、季節違いの衣服を着ることは非常に危険です。ですので、衣替えのタイミングは非常に慎重に行います。介護施設では通常、夏に向けての衣替えは一般より遅く、冬に向けてはかなり早めに行います。

 家で認知症の家族を介護されている人もいますが、タンスに季節違いの衣服を入れている人がいます。服を入れ替えるのが面倒というのが理由ですが、これはすごく危険です。住環境に季節感を引き出すためにも夏は夏の衣服、冬は冬の衣服と必ず分けましょう。見当識障害で夏なのに冬だと感じている可能性もあり、できるだけ日本の四季に合わせた環境を整えましょう。

[参考記事]
「認知症の母には失行の症状があり、洗濯も料理も出来ません」

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