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認知症の周辺症状はどのような症状なのか

 

 認知症の周辺症状は「BPSD」とも呼ばれており、最近では「行動・心理症状」と呼ばれるのが一般的になっています。認知症には、この周辺症状の他に中核症状と呼ばれる症状もありますが、この2つは違うものになります。

 中核症状は、脳が損傷を受けることにより直接現れる症状なので、認知症の人に必ず起こることです。代表的な中核症状には記憶障害や見当識障害(時間や季節などが分からなくなる)があります。周辺症状はその人の置かれている環境や性格などによって個人差があるため、一人一人違う症状が出るのが特徴です。

 では、周辺症状にはどのような症状があるのでしょうか。ここでは周辺症状について詳しく説明していきたいと思います。

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周辺症状にはどのような症状があるのか

 周辺症状は、認知症の中核症状である記憶障害、実行機能障害、失行・失認などの器質的要因に、環境や心理状況などの二時的要因が加わることにより現れる症状です。ですから、必ずしも皆に現れる症状ではないということになります。

 周辺症状は、「行動症状」と「心理症状」の2つに分けることができます。認知症の方は、ちょっとしたストレスや環境の変化で周辺症状が現れることがあるので、適切な対応をしてあげることが大切です。

行動症状は、

・徘徊

・暴言、暴力

・多弁や多動

・弄便

・異食

・脱抑制行動

などが挙げられます。

 徘徊は、家の中を歩き回ったり、自分の家が分からなくなって外を歩き回る…などの症状が多く見られます。初めは目的を持って歩いていたのに、途中から目的を忘れてしまい、ただただ歩き回るという場合が多いです。警察に届けられた件数でいえば年間1万件以上の徘徊者がいることが分かっています。届けられた件数でこの数字ですので、実際はもっと多いでしょう。

 また、介護をされることに抵抗がある場合などは暴言や暴力が見られることもあります。また、嫌なことや自分がしたいことを伝えたいけど、言葉で上手く言うことができなかったりすることで暴力が引き起こされたりします。介護抵抗がある場合には、プライドを傷つけず社会的に必要な存在であることを認めてあげるような対応が必要になります。

 弄便は聞き慣れない言葉ですが、「ろうべん」と読みます。意味は文字通り「便をいじる」ことです。便をパンツやオムツから取り出し、ベッドに擦り付けたり、頭に塗ったりします。便を不潔なものだという認識はなく、「なんかお尻が気持ち悪いから、便を手で取り除いている」という行為です。ですので、排便の管理をすることで予防するしかありません。

 異食も聞き慣れない言葉ですが、「食べ物ではない物を食べようとする行為」です。例えばティッシュを食べたり、新聞を食べたり、包装されているビニールを口に入れたりと色々な物を食べようとします。異食はお腹が空いていることが主な原因ですので、量を変えずに食事の回数を増やしたり、おやつを用意したりするしかありません。

 脱抑制行動とは、自分の感情がうまくコントロールできなくなり、社会的に逸脱した行動を取る症状です。性的な欲求(介護士のお尻を触ったり、陰部をさらけ出すなど)や、相手に対して失礼な言動が多くなります。

心理症状は、

・妄想

・幻覚や錯覚

・抑うつ

・不眠

・情緒不安定

・無気力

などが挙げられます。

 認知症の方には、不眠や抑うつの症状がある方が多く見られます。気分が落ち込んだり感情が鈍くなったりやる気が起きないなどの症状が特徴です。ショックな出来事や住環境の変化などが原因になる場合が多いようです。

 また、認知症の方には妄想がらみられる場合も多いですが、「物盗られ妄想」もその1つです。物をしまった場所を忘れたり、失くしてしまったという記憶がなくなってしまうことで「誰かに盗まれた!」と思い込んでしまうのです。原因は認知症の中核症状である記憶障害ですが、それに不安や寂しさなどが加わることで物盗られ妄想に繋がるケースもあります。

 幻覚は「庭に知らない子供がいて、遊んでいる」などリアルな描写をするケースが多いです。認知症の方には実際に見えている現象ですので、「子供なんかいないよ」と否定しても仕方がありません。「子供に家に帰るように言ってくるね」など話を合わせることで不安にさせないようにしましょう。

介護をする上で対応が難しいのが周辺症状

 介護者が認知症の方の介護をする上で悩まされるのは、主に中核症状ではなく周辺症状です。昼夜逆転をし、夜に徘徊したり、それを止めようとすると暴言を吐かれたり…毎日このような状況だと介護する側もストレスがたまってしまいます。

 しかし何度も言うように、周辺症状は環境やストレスなどの心理状況により左右されるものです。ですから、介護者自身がストレスを感じ、対応を間違えてしまうことで、周辺症状がさらに悪化してしまうこともあるのです。

周辺症状にはどのような対応をすれば良いのか

 夜になってもなかなか寝付けず、大声を出したり徘徊したりするAさん。介護者の娘さんは毎日母親の対応をしていて疲れ果ててしまいました。

 このような時に早く寝なさいと叱ったり無理やり寝かそうとすると、ほとんどの場合が逆効果になるでしょう。自分に置き換えて考えて見てください。今自分がどこにいるのかが分からず、何をしているのかも分からない…そんな時は不安になりませんか?自分だったらどのように声をかけて欲しいのか・どのように対応して欲しいのかを考えてみればいいのです。

〈自尊心を傷つけない〉
 認知症の方がすぐに忘れてしまうことや何度も同じことを聞くようなことがあっても、否定したり叱ったりしないようにしましょう。例えば「物盗られ妄想」の場合には、介護者が先に物を見つけても「ここにあるじゃないか」と言わないようにしてください。「あそこ、探してみてよ」と言って、本人に見つけてもらうのです。そうすることで誤解されずに済みますし、自尊心も傷が付きません。

〈本人の気持ちを理解し寄り添う〉
 認知症の人の心の中には、本人の世界があります。その世界を大切にしてあげましょう。今過ごしている現実とはかけ離れている場合もありますが、否定せずに理解してあげることが大切です。先ほどの幻覚の例でも書きましたが、否定をしないで話を合わせてください。

〈愛情と笑顔を忘れずに〉
 認知症の方は人生の大先輩であることが多いと思います。それまでいろんな経験をしていろんな人と出会ってきたのです。子供でも物でもありません。認知症のせいで色々なことが理解できなかったり、忘れてしまうことがありますが、愛情を持って笑顔で接することを心がけましょう。

〈本人の生活リズムや役割を奪わない〉
 人にはそれぞれ自分の生活パターンや日々の役割があります。生活リズムが崩れている場合は調整することが第一ですが、そうでない場合は本人の望むリズムに合わせてあげましょう。また、日課にしていることや習慣を奪うことのないようにしましょう。何でも介護者がやってしまうことで、さらに認知症が進行してしまったり、筋肉が弱くなってしまいます。

 周辺症状に、介護者は悩むことが多いと思います。しかし上記で述べたように、認知症の方の気持ちになった介護を心がけることで、周辺症状は改善する場合もあります。

[参考記事]
「認知症の中核症状とはどのような症状なのか」

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